老後も健康を保つにはどうすればいいか。医師の宇都宮啓さんは「加齢とともに心身が少しずつ弱っていく状態をフレイルと言い、さらに進行すると要介護あるいは寝たきりになってしまう。自立した老後のためには、フレイルを予防することが重要だ」という――。

※名字の「都」は正しくは旧字体。「土」、「ノ」の次にテン
※本稿は、宇都宮啓『要介護にならない! 自立と寝たきりの分岐点、「フレイル」を知る』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

笑顔で和朝食を食べているシニア女性
写真=iStock.com/pain au chocolat
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現役時代は「メタボ対策」が欠かせない

食生活において、健康寿命を延ばすために重要なこと。

それは、年齢に応じてギアチェンジをしていくことです。

60代前半までは、生活習慣病の予防と改善が重要となります。生活習慣病を防ぎ、改善していくことこそがフレイルを防ぐことにもつながっていくからです。

そのためには、まず、食べ過ぎ飲み過ぎに気をつけることが欠かせません。とくに、糖質や脂質の過剰摂取は、メタボリックシンドロームの原因になります。

メタボリックシンドロームとは、ご存じの通り、内臓脂肪型肥満に高血圧・高血糖・脂質異常症が重なって、心疾患や脳卒中の危険が高まる状態です。また、肥満の人は加齢とともに筋肉を減らし、体力を落としやすい傾向があります。

こうしたことから、フレイルの予防には、メタボの改善が不可欠となるのです。

だからこそ、60代前半までは、糖質や脂肪の過剰摂取を防ぐこと。加えて、減塩も、高血圧予防のためには必要です。

食べたくても食べられなくなる年齢

しかし、65歳を過ぎたら、栄養に対するこの考え方を徐々に改める必要があります。

なぜなら、加齢とともに、私たちの心身の活力が落ちていくからです。とくに気をつけなければいけないのは、75歳以降。消化吸収能力や噛む力の低下によって食が細くなり、以前のようには食べられなくなります。また、ストレスやうつ状態などの精神的要因や、独居や孤立などの社会的要因なども絡んで欠食や食物の摂取不足を起こします。そのときに陥りやすいのが、「低栄養」です。