幸福に生きる秘訣はなにか。翻訳家の宮崎伸治さんは「お金こそが幸福の源泉だと思い込んでいる人が多くいるが、そうではない。これはノーベル経済学賞を受賞した心理学者によっても証明されている」という。海外の名著から一流の習慣をまとめた『世界の一流は朝・昼・晩に何をしていたのか』(青春出版社)から一部抜粋して紹介する――。

※本稿は、宮崎伸治著『英米の名著から翻訳家が発見! 世界の一流は朝・昼・晩に何をしていたのか』(青春出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。

微笑む老女
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「楽しいのに満たされない」には理由がある

英単語のleisureは、「余暇」「自由時間」「レジャー」といった意味で、自分の好きなことをしたりゆったりと過ごしたりする時間を指す言葉です。

余暇は、passive leisure(受け身の余暇)とactive leisure(能動的な余暇)のふたつに分けられます。

passive leisureはテレビを見る、ユーチューブ動画を見る、ネットサーフィンをするなど、自発的に努力せず楽しめるものです。

passive leisureの特徴は、ラクをして楽しめることです。だらだらしていても、子どもでも、簡単にできます。しかし何かの実力がつくことは期待できません。

一方、active leisureはランニングやテニスをする、絵を描く、ギターを弾くなど、なんらかの自発的な努力が必要です。active leisureの特徴は、積極的に取り組まなければならないことです。集中力もモチベーションも必要です。したがって取り組むほど実力がつきます。そこに「成長する」という楽しみがあります。

アメリカの高校生を対象におこなった研究によれば、テレビを見るよりも趣味やスポーツに取り組んだほうが2.5倍〜3倍、満足感が高かったそうです。

あなたには、active leisureといえるものがいくつありますか?

何に興味をもつかは人それぞれですので、好きなものならなんでもいいと思います。

しかし、active leisureがないと、どうなるか?

仕事や子育てで忙しい時期ならいいかもしれませんが、自由時間がたっぷりできたら退屈しのぎはテレビや動画を見るくらいしかない、という羽目に陥りかねません。

好きなものなら何でもいいのです。

絵画、書道、楽器演奏、料理、社交ダンス、外国語学習、ジョギング、スポーツ……。

このようなactive leisureを見つければ、自由時間が楽しくなるだけでなく、自分自身も成長できます。人生が何倍も楽しくなるのです。

幸せな老後を決める“お金”以外の要素

ノーベル経済学賞を共同受賞した心理学者、ダニエル・カーネマンらの発表によれば、幸福度と収入は、ある程度は比例するものの、年収7万5000米ドル(約800万円)で幸福度はほぼ頭打ちになるといいます。

しかし、お金こそが幸福の源泉だと思い込んでいる人が多くいるのも事実です。その証拠に、書店に行けば「億万長者になる方法」といった類の本がたくさん見つかります。

ある会社員は、投資をくりかえしています。趣味といえるほど投資話が好きなのです。

もちろん投資をくりかえすこと自体が悪いわけではありませんし、会社員のうちはそれでいいかもしれません。平日は仕事があり、有益なことをしている気になれますし、仕事で人と接する機会ももてますから気も晴れるでしょう。

問題は、定年退職後です。

没頭できる趣味を見つけないかぎり、退職後に待ち受けるのは「退屈」になりかねません。

ある哲学者は「人生の二大不幸は病気と退屈だ」と述べました。

退屈を経験したことがない人は、退屈の何がそんなに不幸なのかと思うでしょう。しかし、無職時代に退屈を経験した私は、退屈の恐ろしさを身にしみて覚えています。退屈は、まさに病気と同じくらいの苦痛を私に与えました。