いつまでも若々しくいる秘訣は何か。オリックス元会長で、現在シニア・チェアマンを務める宮内義彦さんは、「明日が楽しみだと思える予定をつくること」だという。精神科医・和田秀樹さんの著書『80歳の壁を超えた人たち』(幻冬舎新書)から、90歳の宮内さんが実践する“脳が老けない習慣”を紹介する――。
(左)和田秀樹さん(右)宮内義彦さん
撮影=鈴木規仁
(左)和田秀樹さん(右)宮内義彦さん

仕事を完全に忘れる

【和田秀樹】(以下、和田)何をもって「心豊か」と言うのか? 宮内さんは、ご趣味とか「これをやってる時は心地よいな」ということはありますか。

【宮内義彦】(以下、宮内)強いて言うならふたつです。ひとつは野球を見ること。でもこれ、ほとんど仕事です(笑)。もうひとつはクラシック音楽が好きでしてね。

【和田】そういうものがあると、心に余裕ができますよね。球団(旧・ブレーブス)を買ったのは、野球好きが高じてのことですか?

【宮内】いえ、たまたまなんですよ。阪急さんが球団を手放されると聞いて飛びついたんです。当時は無名だったオリックスを、どうしたら世間に知ってもらえるか、と考えていた矢先のことでした。「野球チームを買ったら一発で知ってもらえるだろう」と。もちろん私はプロ野球をずっと好きで見てましたのでね。それもありますが。

【和田】いざ持ってみると、応援したくなったでしょ?

【宮内】そうですね(笑)。でも苦労しました。

【和田】だけど何回か黄金時代を作られて、すごいですよね。

【宮内】黄金と底辺。這いずり回った時期も長かったです(笑)。

【和田】経営者の立場とはいえ、野球を見てる時間はやはり楽しいのですか?

【宮内】はい。飽きもせず、じっと見てますね。球場にも行くしテレビでも。いつも家内に笑われるんですよ。「よくも黙って何時間も見てられるわね」って。

【和田】精神科医としては「仕事を忘れられる場」があるのは、とても大事だと思います。実際は、仕事を切り離せない人が多いんです。

【宮内】私は完全に仕事を忘れちゃってますね(笑)。

【和田】それがいいんです。

「仕事人間」がつまらないワケ

【宮内】実は面白いなと思うことがありましてね。今日は先生に教えてもらおうと。

【和田】はい、なんでしょう?

【宮内】遊んでるとフッとね、仕事に関係するアイデアが出てくるんですよ。土日に休んで日曜の晩ぐらいに、なんかいい考えが浮かんでくる。「俺、考えてないのになんで出てきたんや」と。なんですかね、これ?(笑)

【和田】人間の脳って、意識しないけど、膨大な量の書き込みが常に起こってるんです。普段はその情報は引き出されず、脳の奥に蓄積されていきます。ところが一旦無心になるとポッと浮かんできたりする。そういうことなんだと思います。

【宮内】なるほど。

【和田】野球見ながらでも脳は何かを考えている。それが奥底でパッと繫がってアイデアが出てくる。仕事モードから離れ、リラックスした状態だから繫がるのだと思います。

【宮内】そういうことなんですね。不思議と、遊んでる間にいいアイデアが出てくることが何度もあって。

【和田】「仕事人間はつまらない」と言いますが、今の話と関係するかもしれません。常に仕事モードだと奥にある情報がうまく繫がらない。それで仕事の話ばかりする。だからつまらない。やっぱり脳を解放してあげる時間は大事だと思いますよ。