「前頭葉」の衰えは40〜50代から始まる

【宮内】近頃は最近のことをすぐ忘れてしまいます。ところが10年前のことはよく覚えてる(笑)。なんでかなと考えて、思い当たることがありました。

【和田】ほう。

【宮内】最近のことは忘れたんじゃなく、覚えてないんじゃないかと。脳への入り方が薄い気がするんです。

【和田】鋭い洞察ですね。実は人間の脳は、ある種の感動や驚きなど〝感情のフック〞があると記憶に残りやすいんです。でも年をとると感動が減ってくる。それで記憶に残りにくいのではないかと思うんです。

【宮内】なるほど。もっと感動しないといけませんね。

【和田】僕がよく言うのは「年をとったら強い刺激が必要だ」ということです。若い頃は経験が少ないので、小さなことにも感動できます。大して美味しくないものでも美味しく感じるし、箸が転んでも笑えます。若い頃は東京タワーを見て感動できたのに、年をとると物足りなくなる。ピラミッドを見てやっと感動できたりする。つまり強い刺激が必要なんです。

【宮内】なるほど。

【和田】宮内さんは日常的にトップレベルの物事に触れているので、僕らとは感動の次元が違うと思うのですけど。

【宮内】何に触れるかも大事ですが、どう思うかも大事ですよね。いろんなことに興味を

持っていれば、年をとっても感動できると思うんです。

【和田】素敵ですね。脳科学的に言うと、興味・関心・意欲などの感情部分は「前頭葉」という部分が司っています。ところが前頭葉は、脳のなかで最初に縮み始める場所なんです。だから普通の人は、気づかないうちに興味や好奇心が薄れてきてしまう。早い人だと40〜50代から始まります。

【宮内】そんなに早く?

【和田】はい。その点でも宮内さんは驚異的なんですよ。

「行きつけの店」「同じ著者の本」では衰える

【宮内】自分でもね、時々おめでたいと思うんですけど。毎日、明日が楽しみなんです。

【和田】素敵ですね。

【宮内】明日はあの人と会うとか、あそこでご飯を食べるとかね。しょうもない話ですけど非常に楽しみなんですよ。相当におめでたいですよね(笑)。

【和田】いいことですね。それはもともとの性格ですか? 仕事の中で培ったものですか?

【宮内】さあ、どっちですかね。

【和田】実は前頭葉って、意外なことや想定外のことが起こった時に鍛えられるらしいんです。難しい本を読んでも前頭葉は鍛えられないし、難しい数学の問題を解いても鍛えられない。つまり「成績のいい人=前頭葉が優れている」とは限らないわけです。そもそも前頭葉が大きいのは人類だけらしい。不測の事態に対処し続けたことで発達したという説があります。逆に決まったことをやり続けてると、前頭葉は衰える。

【宮内】もったいないですね。

【和田】一般論としてですが、前頭葉が衰えると、想定外の事態への対応能力も落ちてきます。すると多くの人は、なるべく想定外のことが起こらないよう、保守的になるんです。例えば「行きつけの店しか行かない」とか「同じ著者の本しか読まない」など、その傾向は50代ぐらいから顕著になると言われています。

【宮内】冒険しなくなるんですね。

【和田】はい。僭越な言い方ですが、日本人って前頭葉を使う習慣がないんですよ。上に言われた通りのことをやったり、正解のわかっていることをしたりするのが得意です。実験や冒険は好みません。学校や職場も正しい答えを出す人を求めます。実験や冒険をする人を排除しようとするんです。

居酒屋でお酒の入ったグラスを持つ男性
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです