この冬は久しぶりに風邪やインフルエンザなどの感染症が大流行している。どうしたら感染しないで済むだろうか。そして感染したら、どんな食事がいいのだろうか。管理栄養士の成田崇信さんは「近年とかく『免疫力アップ』という言葉が言われがちだが、眉唾もの。それよりも適切な食事などをとることが肝心だ」という――。
マスクをした若い女性の顔
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「風邪に効く栄養素や食事法」

冬は、風邪などの感染症がもっとも流行する季節です。ただし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こってからの数年間は、感染対策がしっかり行われたこともあり、流行自体がありませんでした。それ以降も不規則かつ小規模な流行が多かったです。

ところが、今シーズンは違います。風邪や新型コロナだけでなく、インフルエンザやマイコプラズマなどの感染症も猛威を振るっています。特にインフルエンザの感染者は、現在の形で統計を取り始めた1999年以降もっとも多いとのことです。

こうして感染症が大流行すると、テレビ番組やネット記事で「風邪に効く栄養素や食事法」をよく見かけるようになります。「効く」といっても、栄養や食事はワクチンや医薬品ではありませんから、予防や治療にダイレクトに効くわけではありません。

それでも管理栄養士から見て「風邪にいい栄養素や食事法」はありますから、ご紹介していこうと思います。

食べ物で免疫力をアップできるか

さて、感染症予防には、免疫力をアップすることが大切だと思っている方はとても多いのではないでしょうか。なぜなら「免疫力をアップ!」「免疫力を強化する」などと謳うサプリメントやドリンクなどの商品が、病気予防効果があるかのようにたくさん売られているからです。

確かに、私たちの体には、風邪の原因となるウイルスや細菌などを含むさまざまな病原性微生物から身を守るための「免疫」という仕組みが備わっています。でも、免疫はとても複雑な仕組みなので、免疫力を高めればよいというような単純なものではありません。

また、免疫力というのは医学用語ではありませんし、具体的な定義や指標もありません。近年たくさん売られているサプリメント等の商品はもちろん、昔から免疫力を上げて病気を予防するといわれてきた食品や栄養成分でさえ根拠が不十分だったり、効果が確認されていなかったりします。ですから、食べ物は免疫細胞が正常に働くことをサポートする役割を持っていると考える程度がいいでしょう。