老化を防ぐためには、食生活をどのように改善するといいのか。関東で大規模農家を経営し、「野菜を育むプロ」を自称するしんさんが、肥満対策、カルシウム摂取、動脈硬化予防などに適した野菜を解説する――。

※本稿は、しん(野菜を育むプロ)、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部(監修)『農家が教えたい 世界一使える野菜の教科書 おいしくて体にいい選び方&食べ方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

新鮮な野菜の陳列棚
写真=iStock.com/Photography By Tonelson
※写真はイメージです

「痩せる食材」は存在しない

症状:肥満

肥満はさまざまな生活習慣病につながります。対策には適度な運動習慣やカロリーコントロールが重要であり、「○○を食べたら痩せる」という話ではありません。毎日の食事が少しでも太りづらいものになるよう、次の野菜を意識的に取り入れてみてください。

きのこ
きのこは全般的に食物繊維の一種「βグルカン」が豊富。食事をとると血糖値が上がり、インスリンというホルモンが分泌されて血糖を脂肪に変えます。これは血糖を下げるために欠かせない体の正常機能なのですが、急激に血糖値が上がるとインスリンの分泌も急上昇し、それだけ血糖が脂肪に変換されやすいというデメリットが発生してしまいます。

βグルカンは、胃の中でゲル状になることで食べものの消化・吸収をゆっくりにします。これにより食後血糖値の上昇が緩やかになるため、インスリンの分泌が安定し、血糖が脂肪に変換されやすくなるというデメリットが抑えられるのです。また、βグルカンには腸内でもゲル状になり、コレステロールや脂肪の腸壁からの吸収を抑える作用もあります。

らっきょう
らっきょうに多く含まれる「サポニン」には、腸内での「脂肪合成を抑制」する作用、腸壁からの「脂肪吸収を制限」する作用、「脂質代謝(脂肪燃焼)を促進」する作用があります。つまり「脂肪を作らせない、入れさせない、燃やす」の全方位的に肥満の予防・軽減に役立つ成分と言えるのです。

ピーマンはワタごと食べるのがベター

ピーマン
ピーマンに肥満対策の効果が期待できるのは、「クロロフィル」と「クエルシトリン」という2種のフィトケミカルが含まれているから。クロロフィルにはコレステロールの吸収を防いで体外に排出する作用があり、ピーマンの苦みの元でもあるクエルシトリンには血中の中性脂肪の代謝を促進し、脂肪が体内に蓄積されるのを防ぐ作用があります。コレステロールと中性脂肪、両方を低減させる作用があるピーマンも、肥満対策にうってつけの野菜と言っていいでしょう。

肥満予防! おいしくて体にいい野菜料理

きのこ汁
しいたけ、しめじ、まいたけなど、複数種のきのこをふんだんに使って汁ものに。きのこに含まれるβグルカンは水溶性ですが、汁ものなら溶け出した分まで摂取できます。石づきだけ切り落としたら、栄養の多い軸は細かく刻んでカサと一緒に料理しましょう。

ピーマンとらっきょうの蒸し炒め
ピーマンはクロロフィルとクエルシトリンを多く含むワタごと、らっきょうとともに少量の水で蒸し炒めます。脂溶性のクロロフィルは油で炒めることで吸収率アップ。
ただしクエルシトリンとサポニンは水溶性です。熱に対しては比較的安定していますが、高温調理は避けましょう。