筆者が「あえて帰省したほうがいい」と唱えるワケ
年末年始の新幹線などの予約が、コロナ禍前を上回り、過去最高を更新した。
例年なら仕事納めという人が多い12月28日が土曜日、また、年始の仕事始めの1月4日も土曜日にあたるため、最大で9連休、という人も多いからではないか。
一方、SNS上では「帰省ブルー」と、実家に帰ることを嫌がる声もある。背景には、何があるのか。
1年前、私は、「帰省の価値」を強調する文章を、本サイトに寄せた(なぜわざわざ「苦手な親戚」に会う必要があるのか…社会学者が「帰省がしんどい」と言う人に伝えたいこと)。
コロナ禍から4年ぶりの帰省となる人も多かった昨年末、さまざまなわずらわしさがあるものの、だからこそ、「帰省をするにせよ、しないにせよ、年末年始とは、自分たちの故郷を通して、国を想像する稀有な機会であり、その点で、今こそ帰省を見直すべき時が来ているのではないか」と結んだ。
避けようとする人が目立つなかで、あえて帰省しろ、と述べたためか、この文章をきっかけに、いくつかのメディアで取り上げてもらった。つい先日も、日本テレビの「news every.」で、「イマドキの帰省事情」を解説したところである。
「闇」に思いを馳せるようになった“きっかけ”
帰省が無意味だ、と思っている人は、いないだろう。逆に、意味がありすぎるから嫌なのであり、できる限りしたくない。そんな「帰省ブルー」について、痛感させられたのが、「ABEMA Prime」に出演したときのやりとりだった。
筆者とともに番組にゲスト出演した「関東の実家に両親と暮らすY助さん」は、10年ほど前まで母方の祖父母宅(東北地方)に帰省していた。しかし、従兄弟から「なんでお前結婚しないの」などと聞かれるのがプレッシャーになり、帰省をやめ、祖父母の葬儀にも出なかったという。
番組でも私は、あらためて帰省について「面倒くさいからこそ、あえて帰るプレイのような形」と、苦しい擁護をしていたものの、Y助さんの苦しみは、想像するにあまりある。学者の高みの見物に過ぎず、当事者の思いに触れると、「帰省ブルー」というやわらかい表現では済まない、「帰省の闇」に思いを馳せるようになったのである。