※本稿は、大西広『反米の選択 トランプ再来で増大する“従属”のコスト』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
半導体産業を日本が独占していた時代
エズラ・ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は今では「日本の過大評価」であったと多くの人々が見ているが、日本産業の詳細を見れば見るほどその評価が正しかったのではなかろうかと思えてくる。
たとえば、今や「産業のコメ」として、最も重視されていると言っても過言ではない半導体産業については、図表1に見るようにものすごいものがあった。1986年の世界ランキングのトップ3がすべて日本企業であったばかりでなく、トップ10まで見てもその6社までが日本企業となっている。
また、当時のICメモリーの中核をなした256KDRAM(Dynamic Randum Access Memory)については何と日本企業が世界市場の90%以上を独占している。
日本企業がNVIDIAになれない理由
23年にランキング2位だったNVIDIAは時価総額ベースで今年24年に世界トップとなり、すごいものだと世界の人々に見られているが、その眼で過去にはNECや日立や東芝がみられていたのだと考えられたい。日本はどうしてそんなことができるのか理解できない……と驚異の目で見られていたということである。
確かに、半導体といってもこの間の利用用途の中心は大きく変わり、一般電子機器や大型コンピュータの時代からパソコンの時代に移り、それがさらにスマホの時代に入ったかと思うとAIの時代に突入している。そして、その最初の時代に日本企業が制覇し、パソコンの時代にはIntel、スマホの時代にはSamsungだったとも言える。
そして、AIとなって一気にNVIDIAが伸び、それらのために、「日本企業はその新たな方向への転換に失敗した」のだと説明されてしまっているのである。