アメリカの次なる「ターゲット」は…
なお、以上は半導体摩擦を日米間のものとして説明したが、図表1の後半に見るようにその後の主要なアメリカの競争相手は韓国に移る(この経過は大矢根聡『日米韓半導体摩擦』有信堂高文社に詳しい)。そして、その米韓間でもほぼ同様の半導体交渉が行われており、一度トップを飾ったサムスンがその後インテルやNVIDIAに越されるようになったのも、その帰結ではないかと思われる。
さらに言うと、この表ではまだ表れないが、中国も他分野では相当急速なキャッチアップをしており、それがために現在の激しい米中貿易摩擦となっている。日中韓3国が代わる代わるアメリカの攻撃対象となっているのである。
最後にこの問題を永らく研究されてきた坂井昭夫故京大名誉教授の言葉を引用しておきたい。
「こうした米国半導体産業の復調は、日米半導体協定なくしては多分ありえなかったろう」(坂井『日米ハイテク摩擦と知的所有権』有斐閣 P91)
同じような運命を辿った日本製OS
こうして日本半導体が1980年代、日の出の勢いであったことと関わって、実のところ、パソコンの基本ソフト(OS)もまた日本製が世界スタンダードの一角を占める可能性があったことも述べておきたい。
パソコンの基本ソフトはWindowsだけでなくMacも世界的に通用しているが、それに加えて当時東大助教授であった坂村健氏が開発したBTRONというOSが広まる現実的可能性があったからである。
当時のパソコンはWindowsも含めてひとつひとつの「ジョブ」をアルファベット入力で指示することなしに何もできないような状況にあり、その結果もあり、普及率が数%にしか届いていなかった。が、この問題をこのBTRONは一気に解決できるようなものとして開発されている。
もちろん、「汎用的」なWindowsの優位性ははっきりしていても、これはパッドの使い勝手などいくつかの点でMacパソコンの方が優れていることから想像されるごとく、コンピュータとOSを一体開発すれば立ち上げの時間を短縮できたり、様々な優位性を持てることによっている。
つまり、現在のMacのレベルくらいには十分普及する可能性をもったOSとして多くの日本メーカーも一時は採用しようとしたものであった。