2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」をどう評価すべきか。歴史評論家の香原斗志さんは「美術のセットは素晴らしく、史実に忠実な描写も多くてよかった。一方で違和感を覚えた場面もあった」という――。
「光る君へ」の美術レベルはとても高かった
平安絵巻さながらの美しいビジュアルに何度も息を飲んだ「光る君へ」。『源氏物語』の作者とされる紫式部(吉高由里子、ドラマではまひろ)の物語に、藤原道長(柄本佑)の生涯をからめた2024年のNHK大河ドラマは、色鮮やかで気品あふれる衣裳はもとより、内裏の清涼殿ほかのセットや調度も、細部までこだわって造り込まれていた。それこそ毎回、敬服させられた。
細かい話に思われるかもしれないが、内裏や土御門殿などの装置が、すべて白木で形成されていたのがよかった。私たちがいま眺める日本の歴史的建築は、木部がこげ茶色だが、それは経変変化によるものだ。その時代に新築された木造建築は、当然ながらみずみずしい白木に囲まれていた。
ところが、歴史ドラマにせよ時代劇にせよ、多くの場合、建物の木部はこげ茶色で、昨年の大河ドラマ「どうする家康」も、新築なったばかりの安土城や大坂城の柱や梁がこげ茶色で、違和感を覚えたものだ。「光る君へ」は、そのあたりのリアリティが徹底的に追求されていた。
また、史料に忠実な描写が多いのもよかった。この時代の宮廷の模様は、藤原道長の『御堂関白記』、藤原行成の『権記』、藤原実資の『小右記』という3つの貴族の日記のほか、『紫式部日記』など、第一級史料によって、かなり具体的にたどることができる。実際、それらの記述が活かされた場面が多かった。