“育ちの良い子ども”にはどんな特徴があるのか。都内にある“セレブ向け個人塾”には芸能人や経営者の子どもが通っており、元講師や元生徒によると彼らには特有の雰囲気があるという。ライターの黒島暁生さんがリポートする――。
学校から帰ってくる小さな男の子
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学力向上だけを求めない“セレブ向け個人塾”

良い大学へ進学すれば良い人生が保証されているわけではない。誰もが理解していながら、なにかに導かれるように学歴を求める。実績のある塾の、教え方の上手な講師のところへ――親としてごく自然な感情だろう。

世の中には、入塾する生徒の学校を選ぶ塾がある。有名なところでは、東大進学実績に定評のある「鉄緑会」の指定校制度。指定されている高校は、いずれも偏差値表の上澄みだ。

だが今回紹介するのは、そうした偏差値の高低には一切とらわれず、ごく一部の学校からの入塾のみで成り立つ“セレブ向け”個人塾。まったく目立たず、それでいて確実に対象のニーズを掴む知られざる塾の実態に迫る。

学生時代、筆者にも多少の塾講師・家庭教師経験がある。言うまでもないが、塾も家庭教師も学力を伸ばすことが前提にあり、保護者はより高みを目指して子どもを託す。やや断定的にすぎるとしても、保護者からの期待は学力向上の一点にあるといって過言ではない。

近年、問題視されている教育虐待などの場合も、成果を過剰に追い求めたゆえの悲劇であり、ある意味では典型的な保護者の願望を如実に表している。

だが、筆者が話を聞いた諸角正幹氏(仮名)は、塾・家庭教師にとっての「普通」がそうなっていることを認めつつ、一部の領域においては必ずしも学力だけを求めるものではないと言い切る。