高校入学組は「まっとうな人たち」

【事例② セレブ向け家庭教師の利用者】

現在30代に差し掛かったという野間涼介氏(仮名)は高校時代、定期試験対策のためにセレブ家庭教師会社Xに通っていたという。

野間氏の父親は経営者。野間氏自身はエンターテイメント・芸能関係のプロモーションをトータルに担う仕事をしているのだという。さっぱりとしたなかに高級感の光るファッションセンスを褒めると、「ユニクロみたいなもんすよ」と照れた。

野間氏は幼稚園時代から有名私立に入園。その後、大学時代までを同じ場所で過ごした。現在でも仲の良い仲間は小・中学校時代までの同期なのだという。

「昔から一緒にいる仲間なので、心を許せる人が多いですよね。住んでいる場所も学力も考え方も結構バラバラなのに、集まると安心感があるというか。幼い頃から私立だったので、保護者が関わる場面が多く、自然と友人の保護者の顔も見える環境だったからか、みんな顔なじみで信用できるんですよね」

同校には高校入学組もいるが、その温度差をこんな言葉で野間氏は表現する。

「高校受験で入学してくるご家庭は、学力に重きを置いている側面がありますよね。学力教育をある程度やって、社会に出る計画性があったみたいですから、まっとうな人たちだと思います(笑)」

“コネ”がありすぎて転職サイトも不要

当時の自分たちは先を見通していなかった、と謙遜けんそんしているようにも聞こえる。計画性の有無はともかく、幼稚園組の横のつながりは固い。実社会に出た現在においてもなお、脈々と関係性が維持されていることに驚く。

「同窓生にいない職業はないのではないかと思うほどバリエーションに富んでいるので、『こんな仕事をやってみたいな』と思ったときに繋がるのが比較的容易なのは助かります。持ちつ持たれつですよね。

たとえば同級生に政治家の親戚がいれば、僕らが戦略のプランニングにおいて一部支援したり手伝ったりすることもあります。それぞれが力を発揮できる領域があってそれが可視化されているので、転職サイトも不要なんです(笑)」

そんな野間氏がXへ通うきっかけは何だったのか。

「今回の取材を受けるにあたって改めて両親に聞いてみたのですが、学校の保護者の間で広まっていた口コミでXを知ったようです。仲の良い保護者仲間の子どもはみんな幼馴染みなので、僕も通いやすかったですね。

名門大学へ進学を希望していたわけでもないし、学校の成績も留年するほど悪いわけではなかったけど、学習のモチベーションが保てることと苦手科目が少しでも理解できるようにお世話になっていた感じです。

Xは学内の事情に詳しくて、たとえば選択科目は何をチョイスすべきかなどの学校生活における戦略面での相談も親身に乗ってくれました。特にそれぞれの教科担当の出題傾向を熟知しているのには驚きました。月謝も5万〜10万くらいだったらしく、手頃ですよね」

机で勉強する子供の手
写真=iStock.com/west
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文部科学省が発表した「子供の学習費調査(令和3年度)」によれば、私立の教育機関に通う子供にかかる学習塾費の年間平均額は小学校が年間約27万円、中学校と高等学校が約17万円となっている。差し迫っていない状況で支払う5万〜10万が「手頃」かは議論が分かれるところだが、当人たちの納得度は高いようだ。