トヨタ自動車には、15歳以上の企業内教育を行う「トヨタ工業学園」がある。3年間の高等部、1年間の専門部に分かれており、高卒者が対象の専門部は自動車開発のスペシャリストの育成に特化している。卒業生はどんな現場で働いているのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんによる連載「トヨタの人づくり」。第6回は「生産ラインを設計する整備課の最前線」――。
ランドクルーザー250
画像提供=トヨタ自動車
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生産ラインを設計する「縁の下の力持ち」

濱田幸作は車体製造技術部の第一ボデー整備課の組長だ。トヨタの生産現場には作業者、チームリーダー、組長、工長と肩書がある。

工長は係長級だけれど、現場を仕切る「おやじ」だ。船で言えば船頭の役割が生産現場の「おやじ」である。組長はおやじの補佐役である。

整備課は鉄板をプレスしてボデー溶接、シャシー溶接する技術を開発する部署だ。ボデーは車の骨格で、シャシーは車の足回りの部品が集まる車台のこと。車体製造技術部は高岡工場、元町工場、堤工場、本社工場、田原工場と、トヨタ九州という国内の6工場、そして29の海外拠点にある。

新型車を出す場合、試作車ができた後、量産するために生産ラインを設計する。設計したラインを立ち上げるためには濱田のような技能員が調整して量産ラインに仕上げる。これもまた車作りには欠かせない現場だ。

学園時代の技能顕彰の経験が役立っている

濱田はボデー整備課についてこう説明する。

「新型車を作るための生産ラインの設備を調整する仕事です。大本は生産ラインの設計です。設計から出たものに対して、車体製造技術の技術員が工程計画をする。それから設備計画を行う。自分の部署はですね、自社や仕入れ先様でつくっていただいた設備を設置してから調整を開始して量産のラインに仕上げるわけです。設備とは溶接機械、溶接ロボットのことになります。

溶接作業ですが、仕事の大半はデジタルが主流です。デジタル上で溶接ロボットのプログラミングを行う。また、設備を見て、溶接ロボットのトーチ(先端部分)がどこまで車体に侵入しているかどうかの検査も行います。学園時代の技能顕彰の経験が役立つ職場です。ですから、毎日、やっていて、心底から楽しい。そう言える職場です」