ロボットをイメージ通りに動かせるか
モノづくりの生産現場ではさまざまなロボットが活躍している。溶接のような火花が散り、高温になる現場では人間よりもロボットがやっている作業の方がはるかに多い。ただ、ロボットは設備として搬入、設置してすぐに動くかと言えばそんなことはない。ロボットが動くプログラムを作らなくてはならない。そして、データを流し込んで動かしてみる。実際に動かすと動作に必ずズレが出てくる。それはプログラムだけで直すのではなく、配置する場所、アームの長さなど、物理的な位置を調整しなくてはならない。
この仕事を「ティーチング」もしくは「ティーチ作業」と呼ぶ。そして、ロボットに限らず、新しい工作機械を導入したり、また、新しい車種の製造に既存の工作機械を使用する場合にもティーチングは必要だ。のこぎりで木を切る場合でも目立てをしたり、ハサミであれば刃を研いだりする。かんなであれば刃を調整する。工作機械もロボットも同じだ。道具だから現場の使用実態に合うような調整を施さなくてはならない。濱田たちの仕事はそれだ。
加えて、設置したロボットや工作機械の能力を見るためにさまざまな「意地悪テスト」を行う。連続で長時間動かしたり、機械を冷やしたりして不具合が出たら、それを改修していく。わたしたちは家庭用の冷蔵庫を買って設置し、電源を入れたら、すぐに使う。だが、生産現場に新しい機械を導入したら調整と試運転を行わなくてはならない。
ランクルの生産ラインで導入された最新ロボット
濱田たちがもっとも時間を使って取り組んでいることがロボットの小型化である。その目的はエネルギーを減らすことと生産性の向上だ。
「世界の他の工場ではまだやっていない最先端の考え方であり、最先端を実現している現場です。あまり詳しくは言えないのですが、以前まで4台の大型ロボットでやっていたことを30台の小型ロボットにして、しかも集約して配置しました。ランドクルーザー250(新型)を出すための『高速溶接ライン』と呼んでます。
まず、ラインのなかに小型ロボットを集約して配置する。そして、作業量を増やしてタクトタイムを速くする。タクトタイムとはひとつの製品や部品を作る時間の目安です。そして、集約すればスペースが少なくて済む。
以前のランドクルーザーのラインだとタクトタイムが75秒だったのが、新しい高速溶接ラインでは52秒まで縮めることができました。ただ、問題がないわけではありません。溶接ロボットの場合、小型化すると車体が大きい場合、アームが届かなくなることがあります。アームを長くすると今度はモーターに負荷がかかる。私たちはロボットのアームの長さを最適化しました」