2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。教養(雑学)部門の第3位は――。
▼第1位 大谷翔平でも八村塁でも大坂なおみでもない…アメリカでもっとも知名度が高い日本人アスリートの名前
▼第2位 「姦」という漢字はどう読むのが正しいのか…「平安時代の辞書」に記されていたすさまじい読み方
▼第3位 「二刀流」でも「MVP獲得」でも「1000億円の移籍」でもない…全アメリカ人が大谷翔平の名前を知った瞬間
▼第4位 伝統を重んじているので世界でも12軒しかない…日本国内で「一生に一度は泊まるべきホテル・旅館」5選
▼第5位 「日本酒と言えば大吟醸」はもう古い…大の酒好きが「一周回っておいしい」と絶賛する日本酒とは
アメリカのスポーツ専門局による特大スクープ
2024年3月20日、衝撃のニュースが飛び込んできた。
「ロサンゼルス・ドジャースは大谷翔平の通訳、水原一平を『巨額の窃盗』の疑いで解雇」
オフに10年総額7億ドル(約1000億円)の超大型契約を交わしたスーパースターにまつわるこの一件は、当時スポーツ・ニュースでも大きく報道された。この一報をすっぱ抜いたのは『ロサンゼルス・タイムス』誌とスポーツ専門局のESPN。
とりわけ総力特集を組んだESPNで本記事を担当していたのはティシャ・トンプソンという女性記者だった。ホームページを見ると彼女の肩書きは「Investigative Reporter(調査報道記者)」とある。
より具体的には「リーグの性的暴行やハラスメントの調査、また民事や刑事事件、スポーツ・チケットなどの消費者問題、その他のスポーツと権力にまつわる調査を専門としている」と記されている。
日本のマスメディアがオフシーズンの間に大谷翔平の移籍先や結婚をこぞって報じている間に、スポーツ専門局ESPNでは連邦当局への聞き込み取材や、銀行情報のチェック、そしてドジャース球団へのインタビューなど賭博問題を丹念に調査していたという事実に、アメリカのジャーナリズムに対する姿勢を垣間見ることができるのではないか。
「球界のスターと賭博」
いずれにせよ、各局のスポーツ・コーナーはこの問題を「スーパースターの一大スキャンダル」として報じた。ひと足さきに韓国でパドレスとの開幕戦を迎えていたドジャース。
この時点で他の球団はまだ開幕前であり、また例年この時期は「マーチ・マッドネス」と呼ばれるカレッジ・バスケットボールのプレーオフと重なるため、MLBのニュースはスポーツ・コーナーにおいてもそこまで時間が割かれないのが通例だが、それでも賭博問題はスポーツ界全体の注目事として扱われた。
「球界のスターと賭博」という見出しに、多くのアメリカ人がピート・ローズを想起したに違いない。
MLBの歴代最多安打記録を保持するピート・ローズは監督を務めていた1989年、自身の試合を含む多数のMLB公式戦に賭けていたことが発覚し、永久追放処分を受けている。
大谷翔平はもちろん、当の水原一平も野球賭博には関与していないため、永久追放処分とはならなかったが、多くのベースボール・ファンが一時、最悪の事態を思い描いた。
数日後にはMLBのみならずFBIやIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)が調査に乗り出し、ますます報道は加熱していった。日本でも連日、この一件がどの局でも「ニュース」として大きく扱われていたと聞く。