日本経済を力強く成長させるには、なにが必要なのか。早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは「少子高齢化が進む日本にとって、爆発的に人口が増加するイスラム圏と友好関係を構築することは重要だ。中でも、1980年代に『キャプテン翼』がヒットして以来、日本アニメへの傾倒ぶりが著しいサウジアラビアの動向には注目すべきだ」という――。
「キャプテン翼」をテーマにした展示会より=2019年7月9日、中国・上海
写真=Imaginechina/時事通信フォト
「キャプテン翼」をテーマにした展示会より=2019年7月9日

あと5年で世界人口の「4分の1」に到達する巨大勢力

米国でドナルド・トランプ氏が第47代米国大統領に選出された。バイデン政権による表面上を取り繕っただけの外交の時代が終わり、今後は世界中で各国がみずからの影響力争いを激しく展開する時代となる。そして、米中対立がさらに拡大することが予期される中、世界の帰趨を決する勢力が存在している。それはイスラム世界の人々だ。

2024年現在、世界のムスリム人口は約19億人だが、2030年には約22億人に到達し、世界人口の4人に1人はムスリムという時代が訪れる。当然であるが、イスラム圏の労働人口増加率も高く、中長期的には現役世代のムスリムの占める割合は増加する。つまり、世界における新しいサービスやテクノロジーに関する開発の多くはムスリムの人々によって生産されていくことが想定される。世界経済における市場規模も拡大を続けており、いずれイスラム圏の市場にアクセスできるか否かが先進各国にとって死活問題となることは目に見えている。

先進各国の将来を左右する「ムスリムとの関係構築」

当然であるが、移住や観光を行う人々の人口も増加しており、世界中でムスリムの人々との付き合い方に対する模索が行われつつある。

欧米ではムスリムの人々の受け入れに対して反発などが強まりつつあり、日本においても墓地の在り方などで近隣住民とのトラブルが発生している。しかし、これはある特定の人口が増加し、その生活圏が生来の居住地以外に拡大する場合、過去にも必然的に起きてきた衝突でしかなく特段珍しいものではない。いずれは各国社会がおのおの折り合いをつけていくことで、日本のような移民に閉鎖的な国でも、ムスリムの人々を当たり前に見かけることもそう遠くない未来となるだろう。

そのため、単純に人口面・経済面から考えるなら、ムスリムを味方につけた国は将来的に有利な環境を構築できるのに対し、そうでない国は少数派に転落していくことになるのは必然だ。もちろん、政治はそれをひっくり返すこともあるかもしれないが、だからと言って、そもそもの情勢分析の前提となる土台の変化を無視するべきではない。