アメリカ・イスラエルによる攻撃への報復で、イラン当局はホルムズ海峡の事実上の封鎖を宣言し、資源の輸入に大きな影響が出ている。東京大学特任教授の鈴木宣弘さんは「その余波で、日本の食料自給率が現状の38%から大幅に下がることが考えられる。高市政権は農業政策を根本的に変える必要がある」という――。

「ホルムズ海峡の封鎖」が農業に直撃

長引く円安とウクライナ戦争以降の物価高で、日本人が食料を買えない事態がここ数年深刻化している。拙著(『世界で最初に飢えるのは日本』講談社+α新書)にも書いたが、中国などが経済力にあかして高級肉や海産物などを買いあさるうえ、アメリカとの関係悪化に備えて穀物を買い占めているため、日本の輸入業者は買えなくなってきていると聞く。

その上、インドの人口が中国を抜いて15億人に近づきつつある。経済力でも、インドのGDPはもうすぐ日本を抜き世界4位へ浮上すると見られている。インドが食料品を輸入しはじめると、特に高級食材などは日本にますます入ってこなくなるだろう。

新興国の肉や乳製品需要の増加、そのための飼料穀物需要の増大で、中期的な国際食料需給の逼迫基調がますます強まることは間違いない。

気候変動や紛争リスクの高まりもあり、食料や生産資材の輸入依存からの脱却が不可欠になってきている。こうして食料危機のリスクが高まってきていた最中、米国によるイラン攻撃が開始され、食料危機リスクは一気に深刻さの度合いが極度に増した。

ホルムズ海峡が封鎖に近い状態になったことは、我が国の石油の需給を直撃する大問題だ。トラクターやコンバインといった農業機械も施設園芸ハウスの暖房も石油がないと動かせないため、この問題は必ず農業を直撃するだろう。

日本の食料自給率は「数%」に低下

日本国内のガソリン価格はすでにじわりと値上がりしている。経済産業省が4日に発表したガソリンの全国平均小売価格は、2日の時点で前週より1円40銭高い158円50銭だった(レギュラーガソリン1リットルあたりの価格)。

我が国のエネルギー自給率は11%しかない。一方、食料自給率はカロリーベースで38%(2024年度)となっている。38%はかなり少ないが、さらに、肥料原料がほぼ輸入に頼っていることを踏まえ、野菜だけでなくコメなどの種の自給率も10%になるという仮定での「最悪の食料自給率」を筆者が試算したところ、実は9.2%に近づいていることがわかった。

しかも、この計算には11%という低いエネルギー自給率が含まれていない。ホルムズ海峡の封鎖により、石油の輸入が止まれば、農業機械や施設が使えなくなるので、農業生産は激減しかねない。

そのことを計算にいれれば、日本の本当の自給率は、9.2%どころか、数%程度まで落ち込むだろう。そんな危機的状況が現実味を帯びてきている。いざとなれば、「3食サツマイモで凌ぐ」というのが政府の食料安全保障の切り札だという。それ自体が驚きだが、その切り札さえ危ぶまれる状況になってきている。