「肥料」の供給に影響が出る
肥料は原料のほぼ100%を輸入しているが、その調達に困難が生じるリスクも中東における軍事衝突により増している。具体的には、化学肥料の原料となる尿素、りん安(リン酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)はほぼ全量が輸入だが、紛争により海運の乱れや運賃上昇が生じれば、これらの輸入に影響が及び、肥料の供給に問題が生じる。
さらに、肥料原料の中には、中東から輸入しているものもある。
尿素はカタールやサウジアラビアから、りん安はヨルダン、塩化加里はイスラエル、ヨルダンからも輸入している。割合が大きくはないとはいえ、これらの国からの輸入が止まれば一定の影響があると考えられる。さらに、尿素を中東に依存していた国々がマレーシアなどのアジア産に切り替えているため、日本のおもな輸入先のマレーシア産尿素の価格が上昇しているという「玉突き」的な影響も出ている。
実際、イランによる報復攻撃を受けたカタールでは、資源の輸出が停止している。カタールの国営エネルギー企業カタール・エナジーは、販売先への義務を免れる「フォースマジュール(不可抗力宣言)」を出している。LNGの輸出が大規模にストップすることが確実だ。同社はLNG由来の尿素も生産しており、こちらも生産中止が発表されている。
尿素は肥料原料でもあり、またディーゼル車を動かすのにも必要なため、日本の農業には広範囲に影響が出るだろう。
「あと5年でコメをつくる人はいなくなる」
食料供給の安定のためには、肥料や燃料を含め生産資材の国産化も進めつつ、食料の国内生産を増やして、輸入を国産に置き換え、備蓄も増やすべきだ。そんな取り組みこそが、いざというときに国民の命を守る、最優先にやるべき「国防」のはずだ。
だが、拙著(『令和の米騒動』文春新書、『もうコメは食えなくなるのか』講談社+α新書)でも繰り返し指摘してきたように、政府には、まったくその認識がない。
コメもその他の農産物も、価格が低迷する一方、生産にかかるコストは上昇している。そのしわよせが来ているのが農家の所得だ。農家の所得が低迷しているため、あらたに農業に参入する若者が減少している。次の世代が育っておらず、農業就業者の平均年齢はいまや69歳まで上昇した。
つまり、あと10年ほどで、農家の大半が農業を辞めざるを得なくなるということだ。
筆者は年中、農村の現場をまわっているが、「あと5年もたてば、ここでコメをつくる人はいなくなる。この集落はいずれ住めなくなる」という悲痛な声が山のように寄せられる。その声が本当なら、日本の農業はあと5年くらいが正念場ではないか。

