農業予算を削って防衛費に回す高市政権
だが高市政権から聞こえてくるのは、防衛費の増額や、半導体工場などへの投資の話ばかり。そっちにカネを回さなければならないので、農業予算をできるだけ削りたいのだろう。歴史的に、農業予算は武器購入の穴埋めの削減対象のように位置付けられてきた。
だが、命を守る一番の要は食料であり、それを生み出す農業ではないか。それをないがしろにしていては、どのような安全保障もまったく意味をなさない。
農業予算を削る日本を尻目に、世界各国は農業に手厚い保護を与えている。
米国には、コメにしろ、他の穀物にしろ、国際的に競争力を持つような安い価格で売っても、農家には再生産価格との差額が全額支払われる制度があり、1兆円規模の予算が確保されている。
米国の農家は所得が保障されているため、作りすぎて売れなくなることをあまり気にせず、どんどん増産することができる。余った分については安く売ることができるため、海外市場で競争力を持つので、世界中に販路を広げていける。
欧州も、穀物などの販売価格が生産コスト割れの安い価格になっても、多額の補助金によって赤字部分を補い、残りが所得になる。
フランスでは所得に占める補助金率が130haの小麦農家で235%、酪農家で143%と、補助金で支えられている状況が当たり前なのである。
このように、農家の所得を確保することで、食料品を安く売れるので、需要が広がり、海外への輸出も可能になるわけだ。
日本にはこういった発想や政策がまったく欠如している。
「日本の農家は補助金漬けで過保護だ」は間違い
その上、「日本の農家は補助金漬けで過保護だ」という誤解がいまだにまかり通っている。
日本農業は過保護だという論拠として、OECD(経済協力開発機構)のPSE(生産者保護推定額)が持ち出されることがある。
この指標によれば、日本の農業には5兆円もの保護があり、しかも、その90%以上が市場価格支持(MPS)に依存する、とされている。
ただ実はこの指標には欠陥がある。PSEは内外価格差に基づいているが、PSEは輸送費と関税で説明できない価格差(我が国はこの部分が多い)を、すべて「非関税障壁」として、保護額に算入している。
例えば、スーパーで国産のネギ一束が158円、外国産が100円で並んで販売されているとする。これを、「158円の国産ネギに対して外国産が58円安いとき、日本の消費者はどちらを買っても同等と判断している」と解釈すると、この58円分は国産ネギへの消費者の評価であり、生産者の品質向上努力の結果であって、保護の結果ではない。しかし、PSEでは、この58円が「非関税障壁」として保護額に算入されてしまう。だから、PSEで見ると日本の保護額が過大になるわけだ。

