日本酒をおいしく飲むためには何が重要か。酒蔵コーディネーターの髙橋理人さんは「日本酒に賞味期限はないが、保存状態によって味が変わってしまう可能性がある。開封後はどんな日本酒でも冷蔵庫で保存し、生酒は1週間以内、それ以外は1カ月程度で飲み切るのが理想だ」という――。

※本稿は、髙橋理人『酒ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

日本酒
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賞味期限はないが、色や味は変わる

「日本酒の賞味期限はいつなのですか?」は、非常によく聞かれる質問です。

結論としては、日本酒には比較的高いアルコールが含まれており、アルコール殺菌の効果があるので、開封しなければ腐敗はほとんど考えられず、賞味期限もありません。

なお、ビールは日本酒よりアルコール度数が低いので、賞味期限があり、缶の底に書いてあることが多いです。大手メーカーのビールは9カ月~12カ月です。

ビールは賞味期限が過ぎても容器密封されていれば、衛生的に問題ありません。ただし、クラフトビールは1カ月など、期限が短い場合があるので注意が必要です。

日本酒も開封前であれば10年以上経っていても体に害はなく、理論上はどれだけ時間が経過しても飲むことができます。

ただし、10年以上経った日本酒が、蔵から出荷された時の味わいと同じというわけではありません。徐々に熟成が進み、味や色が変化していきます。

つまり、日本酒には賞味期限はありませんが、味が変化せずに美味しく飲める期限はあるということです。そこで、味を変化させずに美味しく飲む、という観点でおすすめの保存方法をお話しします。

「生酒」は常温で置いてはいけない

◯開封前

一般的に日本酒は、長持ちをさせるために加熱殺菌を行っています。これを業界用語で「火入れ」と言います。「火」という言葉を聞くと、日本酒を直火で沸騰させているようなイメージがあるかもしれませんが、実際は60~65℃で湯煎をします。これによって、お酒の中に残っていた菌が死滅し、酵素の働きを止めることで、味や香りの変化を抑制できます。

しかし、生酒の場合は火入れをしないので、微生物がお酒の中に残っています。そのため、味が変化をしてしまう可能性が高くなります。

温度が高いと菌も活発に働いてしまうので、ラベルに「生酒」と明記されているものは、冷蔵庫に直行で保管するようにしてください。

購入して未開封であれば、生酒なら1カ月以内、それ以外の日本酒なら半年以内で飲み切るのが目安となります。