工場からベルトコンベアがなくなりつつある
最先端の工場風景は大きく変わっている。たとえば、後に述べるけれど、工場の象徴みたいな設備、ベルトコンベアはなくなりつつある。代わりに登場したのがAGV、AMRだ。前者は無人搬送車、後者は自立走行搬送ロボット。AGVは工場や倉庫で荷物や材料を自動で運搬するロボット。
AMRはカメラやレーザー光などのセンサーで周囲の環境を認識し、自律的に走行するロボット。ベルトコンベアだと作業者は横位置から部品を取り付けるが、AGVやAMRであれば車体を載せて運んでいるから、前や後ろからも部品を取り付けることができる。ベルトコンベアがない工場へ行くとこれまでの概念が覆される。
また、工場によくある配電盤やスイッチ類も小型化してスタイリッシュになっている。作業者が手元タブレット端末を持っているのも自然な風景だ。最先端の車は最先端の現場から生まれる。考えてみれば当然のことだ。濱田たちは最先端の現場を作る役割を担っている。
ランクルはこうして生まれる
「現場が変わっているいちばんの点は工作機械の小型化と省スペース化だと思います。そうすれば使用電力も少なくなります。新車種を投入することによって、設備は増えています。しかし、スペースを増やすことはできない。そこで設備を小さくするしかない。
ベルトコンベアもまったくなくなったわけではありません。ですが、AGVのような無人搬送機は主流になってきています。無人で走らせて、台車を連結させたり……。ランクルの250は田原工場で作っているのですが、まさにそういう現場になっています」
濱田は「僕らは電子・電気のスペシャリストですけれど、スマホのことはもうわからない」と言った。
学園でもそうした授業が始まっているが、トヨタ社内にも教える人間がいないので、スマホのアプリ開発、カーボンニュートラルなどの専門家は外部の講師を頼んでいる。この点はさらにカイゼンを要する。トヨタの生産現場で育成しようとしている人間はスマホのアプリ開発、そして、AIだ。