日産自動車(日産)と傘下の三菱自動車、そして本田技研工業(ホンダ)は23日に記者会見を開き、日産とホンダの経営統合に向けた協議を開始すると発表した。前月に日産が発表した2024年度上半期決算では、営業利益が前年同期比90.2%減と大幅に落ち込んでいた。国内2位の日産がなぜ経営危機に追い込まれたのか。淑徳大学経営学部の雨宮寛二教授が解説する――。

業績低下というレベルではない

日産自動車(日産)が、2024年11月に発表した2024年度上半期決算は、業績低下というレベルを通り越して、経営が危機的状況に陥っていることが露呈しました。

経営効率の面で見ると、営業利益が前年同期比90.2%減の329億円となったことから、売上高営業利益率は0.5%となり、本業ではあり得ないほどの低い水準に低下しています。これは、トヨタの同時期の値10.6%と比べれば一目瞭然です。

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この結果は、経営戦略の視座からみると、“必然”であって“偶然”ではありません。なぜなら、この数値は、あくまでも2024年度上半期の結果ですが、内田誠社長が社長に就任した2019年12月からすでに作り出されていたからです。

内田体制下で策定された2020年度からの4カ年事業構造改革計画「Nissan Next」では、生産能力とそれに伴う車種の削減が焦点となりました。

カルロス・ゴーン元会長時代に進められた拡大戦略を改め、当時720万台あった生産能力を500万台へと大幅に削減しましたが、2023年度の販売台数が344万台であったことを鑑みれば、能力過剰が解消できていないことは明らかです。

そのうえ、2020年以降、毎年の販売計画をおおむね400万台に設定してきましたが、当初計画からの下方修正を繰り返し、実際の販売台数が、当初計画を上回る年度は一度もありませんでした。

「技術の日産」なのに、技術で勝負できていない

こうした経営状況にもかかわらず、日産が2024年3月に発表した新中期経営計画「The Arc(アーク)」では、3年後の2026年度までに100万台増の販売計画を打ち出し、再度、拡大路線に転じるとの意思決定を下しています。

しかし、構造改革が達成できていない状況下で、再度拡大路線に舵を切るのは、経営状況をさらに悪化させることになります。それゆえ、経営再建には原点回帰が求められることになりますが、それは、必ずしも「技術の日産」に立ち返ることではないということです。

技術の日産は、日産の経営が技術オリエンテッドであることを象徴するものですが、それが必ずしもブランドにまで昇華されているとは言えない状況にあります。

確かに、日産には、ADAS(先進運転支援システム)である「インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)」を始めとして、ハンズオフが可能な運転支援システムである「プロパイロット2.0」や、低燃費とハイパワーを同時に実現できる世界初の可変圧縮比エンジン「VCターボ」など、他社との差別化が図れる技術が存在します。

しかし、重要なのは、こうした技術を使って、いかに他社との“違い”を生み出せる車を開発できるかという点です。