日産が見習うべき日本車メーカーとは?
グループAを構成する企業は、2023年度ではトヨタだけとなりましたが、このグループに位置するメーカーは年間の販売台数が1000万台を超え、規模の経済を働かせてフルライン戦略により全方位で高収益をたたき出している企業群です。
一方、グループBを構成するのは、ベンツ、BMW、SUBARU(スバル)、テスラで、年間の販売台数が200万台前後で、選択と集中による徹底した差別化戦略を展開して高収益を実現している企業群です。
たとえば、スバルは、年間販売台数が約100万台でトヨタの約10分の1、世界市場シェアでは1%程度に過ぎません。
こうした企業規模の小さいメーカーが大手メーカーと対等に競争しても勝ち目がないのは明らかなことから、スバルは集中戦略の中でも「差別化集中」に特化して、これを実践することで競争力を高めています。
そのうえ、あえてコストリーダーシップ戦略を自社単独の戦略には組み込まず、スタック・イン・ザ・ミドル(トレードオフの戦略に挟まれ身動きがとれなくなる状態)を回避しているのです。
「スバリスト」によって長く支えられている
スバルは、ターゲット顧客をリテールに、また販売地域を生産拠点である日本や米国に絞り込むなどして、集中戦略に軸足を置いています。そのうえで、安全性を極めるという差別化集中を選択しているのです。
他方で顧客に対する付加価値の創出は、自社製品の賛同者として熱烈なファンやシンパを増やすことにつながります。こうしたロイヤルカスタマー(忠実な顧客)を増やせるのも、差別化戦略を採用する企業の特徴のひとつと言えます。ロイヤルカスタマーを多く抱えることができれば、ブランド力が上がり自社の競争力は高まります。
スバルには、ロイヤルカスタマーとして「スバリスト」と呼ばれる非常にコアなファンが存在します。スバルの強みとしての安全性を恒常的に高めることにより、昔から熱心な愛好家を増やしてきました。こうした古くから存在するスバル車の愛好家は、たとえ競合他社から代替品が発売されたとしても、直ちに乗り換えたりはしないのです。
このスバルの経営戦略は、今後の日産の進むべき方向性を示してくれるものです。それは、グループBの方向を目指して集中戦略をとることでレジリエンス(再起力)を高めることです(図1方向性①)。
しかし、日産は、アークで100万台増の販売計画という数字ありきの拡大路線へと突き進む方向に舵を切ることを明らかにしました。