企業や事業の規模拡大を急速に推し進める際には何に気をつけるべきか。コラボレーティブ・ファンド社パートナーのモーガン・ハウセル氏は「スターバックスは、次々と店舗をオープンさせて、成長目標を達成しようと必死になるあまり、合理的な分析がおろそかになった。規模の拡大を推し進めれば、収益は増大するかもしれないが、失望する顧客が急速に増える」という――。

※本稿は、モーガン・ハウセル(著)、伊藤みさと(訳)『SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

スターバックスコーヒー
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身の丈に合った規模とスピードを超えないこと

「9人の女性を妊娠させても、一カ月で赤ん坊は生まれない」と、かつてウォーレン・バフェットは冗談を言ったことがある。

これは冗談だが、驚くことに、人間はしばしば処理が追いつかないほどプロセスを速めようとする。

人は価値あるもの、特に儲かる投資や特別なスキルなどを見つけると、「素晴らしい。だが、それをもっと早く手に入れることはできないのか?」と訊いてしまいがちだ。もっと強硬に推し進められないか、規模を倍にできないか、もっと搾り取れないか、と。

ごもっともな質問なので、訊いてしまうのも無理はない。

人は長らく、価値あるものを無理に推し進めたり、手っ取り早くなんとかしようとしたり、多くを求めすぎたりしてきた。

しかし、たいていのものには身の丈に合った規模とスピードがあり、それを超えて無理をすると逆効果になる。