世界で深刻化する“スタバ離れ”
かつての「第三の居場所」はどこへ――。米スターバックスが、深刻な業績悪化に瀕している。2024年第4四半期の純利益は前年同期比で約25%減。本拠地アメリカでは来店客数が10%減少し、中国市場でも現地チェーンとの競争激化で既存店売上高が14%落ち込んだ。
9月に就任したブライアン・ニコルCEOは、「戦略を根本的に変える必要がある」と危機感を露わに。1杯1000円を超える高価格帯の商品がインフレ下で敬遠され、複雑なカスタマイズによる長時間待ちも客離れに拍車をかけている。
価格に加えて問題となっているのが、オペレーションの非効率だ。同社の看板商品「フラペチーノ」は、1杯の提供に16もの工程と87秒を要する。加えて、スターバックスといえば、豊富なカスタマイズが売りだ。長いオプション指定をレジで指定できるサービスは、自分だけの1杯を探求できると同時に、常連の心を巧みにくすぐる。
「ソイで、ベンティーサイズのホットのカフェモカを、ショット追加、エクストラホイップ、チョコレートソースも追加で」といった具合だ。「ソイ」で牛乳を豆乳に変更し、「ショット追加」でエスプレッソを通常より1ショット多くリクエストしている。
だが、アプリからの注文でカスタマイズの敷居が下がったことで、バーカウンターの内側は効率の低下に見舞われている。新CEOのニコル氏は、オプションの制限策を打ち出した。チェーンの“売り”だったカスタマイズに、自ら足枷をかけた形だ。
平行してニコル氏が人間味回復の象徴として掲げる、「20万本のフェルトペン」とは。効率化と接客サービスの両立を目指す新生スターバックスの行く先を占う。
15分以上待たされることも…注文の半数以上で目標時間をオーバー
米スターバックスの業績悪化が顕著だ。9月に同社の最高経営責任者(CEO)に就任したニコル氏は、米CNBCニュースに対し、顧客を取り戻すためには「戦略を根本的に変える必要がある」との厳しい見通しを示した。
同社の2024年度第4四半期の決算は、純利益が9億930万ドル(1株当たり80セント)と、前年同期の12億2000万ドル(同1.06ドル)から大幅に減少した。世界全体の既存店売上高は前年同期比7%減、来店客数は8%減と、アメリカ国外でも奮わない。
特に不振が目立つのは、本拠地であるアメリカ市場に加え、パイの大きな中国市場だ。アメリカの既存店売上高は6%減、来店客数は10%減を記録。中国では、ラッキンコーヒーなど安価な中国系チェーンとの競争激化により、既存店売上高が14%減少した。S&P 500指数が今年に入って22%上がるなか、スターバックスは1%の弱い伸び率に留まっている。