年老いた親にどう向き合えばいいのか。社会福祉士でNPO法人「となりのかいご」代表の川内潤さんは「親のことが心配でも、あまり手助けしすぎないほうがいい。家族が必要以上に親のことをケアすることが、むしろ逆効果になることがある」という――。(第1回)

※本稿は、川内潤『親の介護の「やってはいけない」』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

車椅子に座っているシニア
写真=iStock.com/koumaru
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「親を詐欺から守りたい」という気持ちは分かるが…

近年は、1人暮らしの高齢者を狙った詐欺さぎや、訪問販売などの悪質商法が増加の一途を辿っています。ですから、見守りサービスのみならず、防犯目的の商品もたくさん販売されています。

子どもにしてみれば、親が詐欺に遭って老後の大事なお金をだまし取られたら大変だと思うから、利用したいと考えるのでしょう。でも、自分たちの生活に置き換えたとき、リスクをすべて回避した生活を望むでしょうか。

先日も、認知症の傾向が出はじめた母親を持つ娘さんから、電話に防犯のために通話録音機をつけたという話を聞きました。お母さんは羽毛布団の打ち直しや保険の見直しを勧誘され、娘さんが知らないうちに契約をしてしまったといいます。気づいてクーリングオフができたからよかったものの、どうやら母親が自分から電話をしてしまっているらしいと知って、半ば強引につけてしまったそうです。

相手方に「この通話は防犯のために録音されます」と警告メッセージが流れるタイプなので、母親からは、「友だちに、『電話するとヘンなメッセージが流れる』と言われるから外してほしい」と懇願されているそうですが……。ただ、電話に録音機をつけたからといって、詐欺に遭う可能性がゼロになるわけではありませんよね。それはほかの商品でも同じこと。

詐欺に絶対に遭わないようにするためには、それこそ外部との通信をすべて遮断して、親を四六時中家に閉じ込めておく以外に方法はありません。冷静に考えれば、私たちだってリスクは少ないかもしれませんが、詐欺に遭う可能性があるわけです。