年老いた親に接する時にどんなことに気を付ければいいのか。社会福祉士でNPO法人「となりのかいご」代表の川内潤さんは「親の記憶力を試すような声かけをするのは避けたほうがいい。認知症の進行を少しでも遅らせたいという気持ちはわかるが、結果的には親にストレスを与えてしまい、むしろ状態が悪化してしまうおそれがある」という――。(第2回)

※本稿は、川内潤『親の介護の「やってはいけない」』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

介護者と高齢者の手
写真=iStock.com/kazuma seki
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記憶力を試すような声かけは逆効果

多くの家族は、認知症の親の徘徊がはじまると、家に閉じ込めて外に出られないようにしてしまいます。

たとえば、玄関を開けるとチリンと音が鳴るようにベルをつけたり、家族が片時も目を離さないよう交代で、まさに“見張り”ます。でも、私の今までの経験から言っても、それは逆効果だと言わざるを得ません。

本人を混乱させてしまいますから、家族が目を離した隙に、ふらっと出て行ってしまう可能性が高まるんです。「徘徊するからといって外に出さないのは、本人の混乱を生んで、よりトラブルを増やしてしまうのでやめましょう」と書いてある記事を読んだことがありますが、私もその通りだと思います。

徘徊は心配かもしれませんが、GPSをつけているのですから、家のなかに閉じ込めず、外に出てもらってはどうでしょう?

現在は「地域の高齢者見守りネットワーク」というものがあって、そこに事前に登録するのも1つの方法です。ただ、徘徊が頻繁ひんぱんになってきたら、そのときは施設に入ってもらうことを検討したほうがいいと思います。

また、家族は認知症の進行を少しでも遅らせたくて、「お父さん、夕ご飯に何を食べたか、覚えてる?」「孫の名前、言える?」「お父さん、今いくつ?」などと、できなくなっていくことを主体に聞いてしまいます。でも、親のためと思っているこうした声かけが、実はいちばんよくありません。忘れていくことを知ることで、逆に本人にストレスがかかり、混乱させてしまいます。

つまり、家族が認知症予防だと思ってやっていることが、認知症を悪化させているわけです。恐ろしいことですよね。