老後破産するかどうかは計算すればわかる

いったい資金をいくら貯めれば、幸せな老後を迎えることができるのか。2019年に「老後2000万円問題」が話題になってから5年が経ちましたが、いまだに2000万円が独り歩きして老後の生活に不安を覚える人が少なくありません。

老後の必要資金2000万円という金額は、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の調査報告で試算された金額です。この試算の金額がすべての人に当てはまるわけではありませんので、実際に必要となる老後資金の額は、人によって大きく異なります。

FPの有料相談にくる人は、すでに2000万円を上回る資産を持っている人が多く、それほど心配する必要がありません。一方、社会福祉協議会などの無料相談にやってくるのは低所得に悩む人がほとんど。老後資金については深刻な課題を抱えていますが、まず目の前の生活を立て直すことが先決です。

新一万円札
写真=Adobe Stock/tkyszk

老後2000万円問題が厄介だったのは、中流層なら手が届く金額だったからです。たとえば「老後8000万円問題」と銘打っていれば、中流層は自分とは無縁の話と感じて気に留めなかったはずです。

2000万円を貯めるのはもちろん大変なことですが、努力次第でどうにかなる水準ゆえに、キーワード化して注目を浴びてしまったのです。老後資金の不安を解消するには、平均ではなく、自分に必要な老後資金を計算することが一番です。

すでに70代に入っている人は、おそらく貯蓄を少しずつ取り崩している段階でしょう。その場合は「月々の赤字額12カ月分+1年分の特別支出(税金や家の修繕費、家電の買い替え費、旅行代など)」が年間赤字。それを90から100歳までの年数で掛け合わせた額が、自分の老後に必要なお金です。

老後に必要なお金を把握するために私がおすすめしているのは、「貯金簿®」です。貯金簿は預貯金や運用商品の現在額、貯蓄性のある保険の払い込み済みの保険料総額などを定期的に記録するノートのこと。家計簿に支出を記帳しているだけではわからない、銀行口座の利息や運用商品の損益を管理することができます。

年金の支給はふた月ごとなので、年金生活に入っている人は2カ月おきに貯金簿に記帳するのが理想的です。しかし極端な話、年に1回の記帳でも、前年の残高と比べることで年間の収支額がわかります。

実際のケースで想定してみましょう。1230万円の貯蓄を持つ年金暮らしの70歳夫婦が、2カ月あたり7万円の赤字を出しているとします。この場合、年間の赤字額が42万円で、特別支出が18万円だとすると、毎年60万円の資産が目減りしていくことになります。

毎年60万円の資産が消えるときくと、不安を覚えるかもしれません。しかし、この資産減少のペースを維持できれば、日本の平均寿命を上回る90歳超まで、破産することなく生活することができます。