ついに「ホンダとの経営統合」へ

拡大路線に再度軸足を定めても、図1における2017年度の日産のポジショニングが示すように、仮に販売台数が向上したとしても、単独で収益率を改善することは極めて難しいと言えます。

ただ、この方向におけるソリューションとして考えられるのは、単独ではなく他社と連携して今後増大する研究開発や製造に関わるコストをシェアしながら規模の拡大を図るアプローチです。

それが、先般、日産がホンダとの間で本格協議を開始した経営統合ということになります。持ち株会社を設立したうえで、それぞれの会社を傘下におさめる形で統合することから、日産傘下の三菱自工も含めると、年間販売台数が830万台に達する規模の巨大グループが形成されることになります(図1方向性②)。

この統合は、ホンダが日産を救済する形で進められることになりますが、図1でわかる通り、ホンダのポジショニングはスマイルカーブ中央に位置していることから、統合により経営効率を高めるためには、日産の構造改革はもちろん、ホンダの経営改善もまた必要不可欠となります。

写真=時事通信フォト
ホンダ、日産、三菱3社共同会見

プライドが高い日産をホンダは救済できるのか?

今後、自動車業界では、EVやPHV、自動運転、SDV(ソフトウェア定義車両)の開発を同時に行っていく必要があり、その実現には、数兆円とも言われる莫大な資金の投入が必要となることから、スマイルカーブの中央に位置するホンダと日産の両社が経営統合して規模を拡大することは重要な意味を持ちます。

しかし、その一方で、経営統合を進め範囲の経済を享受するためには、両社が保有する技術の選択と集中、人事や財務システムの統合など両社の協議による意思決定が必要な課題も多く存在します。

これまで自主自立の路線を堅持してきたホンダと技術面で高いプライドを誇ってきた日産が、従来の経営手法に固執することなく、協業により経営効率や革新性を追求することができるのか。それは、両社が今後、競争力を高めるための新たな独自戦略を描けるか否かにかかっていると言えるでしょう。

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