グループ再編計画発表の裏に「買収提案」

10月、セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)は、2024年度第2四半期(中間期)決算を発表しましたが、この説明会において注目されたのは、紛れもなくグループ再編計画でした。

記者会見するセブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長=2024年4月10日、東京都中央区
写真=時事通信フォト
記者会見するセブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長=2024年4月10日、東京都中央区

このタイミングでグループ再編計画を発表したのは、セブン&アイが構造改革を進めて企業価値を向上しなければならない状況に追い込まれたからで、その状況を作り出したのは、他でもないカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール社(ACT)による買収提案です。

ACTが8月に提案した買収金額は390億ドル(約5兆8000億円)でしたが、セブン&アイはこの買収金額は「当社の価値を著しく過小評価している」などとして提案を受け入れられないとの回答を書簡で送ったことから、その後、買収金額が7兆円規模にまで引き上げられています。

このACTによる買収提案がセブン&アイの構造改革を促進する契機となり、今回のグループ再編計画の発表へとつながることになるわけですが、ACTによる買収提案との関係で、セブン&アイが示したグループ再編計画はどのような意味といかなる意義を持つのでしょうか。

赤字のイトーヨーカ堂を切れない本当の理由

今回示されたグループ再編計画は、セブン&アイの事業構造を再構築し主力のコンビニ事業に注力していくという戦略の下、経営資源をコンビニ事業に集中させて企業価値向上を図ることが狙いです。

そのための方策が、祖業スーパーであるイトーヨーカ堂(ヨーカ堂)などコンビニ以外の事業の分離で、具体的には、ヨーカ堂をはじめ、ヨークベニマル、ファミリーレストラン「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズ、生活雑貨のロフトなどコンビニ以外の小売り・外食など計31社を、新たに設立する中間持ち株会社「ヨーク・ホールディングス(ヨークHD)」の傘下に置くというものです。

ヨークHDの株式は基本的にはセブン&アイが保有しますが、株式の一部を外部のパートナーとなる企業に売却し、そうした企業の協力を得ながら、2023年度まで4期連続で赤字が続くヨーカ堂の事業立て直しを図る意向です。

このように、コンビニ事業への選択と集中を高める姿勢を明確に打ち出して企業価値の向上を急ぐのであれば、赤字続きのスーパーをはじめとする非中核事業を完全に売却することがより有効な打ち手として考えられますが、セブン&アイはなぜそのようにしないのでしょうか。