雑談がうまい人は、何が違うのか。博報堂ブランドコンサルティング局部長の岡田庄生さんは「相手が本音で話せる環境をつくることが大事だ。誰もが話しやすく、場の雰囲気も良くなるおすすめの雑談テーマがある」という――。

※本稿は、岡田庄生『博報堂のすごい雑談』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

会議室で拍手を送るビジネスパーソンたち
写真=iStock.com/arto_canon
※写真はイメージです

打ち合わせは「雑談」から始める

博報堂には、名刺交換や電話のかけ方などの基礎的なビジネスマナーを学ぶ新入社員向けの研修があります。その研修の最後に、ビジネスマナーに関するクイズがあります。「会議には遅刻してもかまわない」「SNSで業務の話題をつぶやいてもよい」といった項目に対して「○」か「×」をつける簡単な内容です。

その中に、「打ち合わせの最初は雑談から始めたほうがよい」という項目があります。この項目に対して、新入社員の多くが自信満々に「×」をつけますが、正解は「○」です。本書でお話しした議論やアイデアを拡散するための雑談は、おもに「打ち合わせ中盤」の場面で行われます。

それ以外に、もうひとつ私たちが大切にしているのが、社外の商談や社内の打ち合わせの冒頭10分で行う雑談です。一般的に、打ち合わせ冒頭の雑談は「いきなり本題に入らずに、ひとまず雑談をすることで場を温める」という、いわゆるウォーミングアップ的な意味合いで行うことが多いと思います。

もちろん、私たちの雑談にもウォーミングアップの意味合いはありますが、それ以上に重視していることがあります。それが、打ち合わせに参加している人たちの「自己開示」です。

相手の本音を引き出す

「自己開示」について、博報堂の社員は「パンツを脱ぐ」という言い方をよくします。

自己開示とは、自分の考えや意見、価値観などを相手に正直に伝えることを指します。なぜ、打ち合わせ冒頭で雑談を通して「自己開示」する必要があるかというと、それは、「本音で話せるコミュニケーション」をつくるためです。

「新人の自分がこんなことを言ったら、怒られるかもしれない……」
「自分の意見は見当違いで、恥をかくかもしれない……」

このように、多くの人が本音にフタをしがちです。本書でお話しした通り、私たちは議論やアイデアを拡散させることを大切にしています。議論やアイデアの拡散には、自由な発想が欠かせません。そのため、打ち合わせに参加している人全員が、「建前」の態度や意見ではない、本音のコミュニケーションをする必要があるのです。

打ち合わせの場を含め、博報堂の職場は、「友人同士の集まり」のような雰囲気と、社外の人によく言われます。もちろん、社員全員が本当に「友人」というわけではありません。「友人同士」のような雰囲気は、お互いに「自己開示」をして、本音で話せるコミュニケーションを心がけている結果として、生まれているのです。

近年、オンラインの打ち合わせや商談が増えています。オンラインは、対面に比べると場の空気がつかみにくいので、雑談がしづらいという意見もあります。ただ、それでも博報堂の社員に聞いてみると、オンラインであってもできるだけ冒頭に雑談をするようにしている、という人が多いようです。私自身も、冒頭の雑談は良い仕事をするためには欠かせないもの、と考えているので、オンラインでも変わらずに行うようにしています。