資生堂が2月に発表した2024年12月期連結決算は、最終赤字が108億円と4年ぶりの赤字に転落した。淑徳大学経営学部の雨宮寛二教授は「資生堂は中・高価格帯ブランドに選択と集中の舵を切ったが、結果として競合他社に低価格帯の顧客を奪われるという“イノベーターのジレンマ”に陥っている」という――。
記者会見する資生堂の藤原憲太郎社長最高執行責任者(COO)=2024年11月29日午後、東京都中央区
写真提供=共同通信社
記者会見する資生堂の藤原憲太郎社長最高執行責任者(COO)=2024年11月29日午後、東京都中央区

「108億円の最終赤字」という衝撃

資生堂が2025年2月に発表した2024年12月期連結の最終損益は、108億円の最終赤字となりました。4年ぶりに赤字を計上した主要因は、2021年に売却したベアミネラルなど化粧品3ブランドの売却対価が回収不能になる可能性が生じたことから、引当金128億円を計上したことにあります。

決算説明のために開かれた記者会見で、藤原憲太郎社長兼最高経営責任者(CEO)は、「(引当金計上に伴う損失は)一過性の要因であり、現金支出を伴わない。引き続き全額回収に注力する」として、営業不振や財務圧迫などの特別な要因が存在するわけではないことが強調されました。

前期の最終損益が217億円の黒字であったことから、引当金計上がなければ、今期は20億円の黒字ということになり、利益は前期の10分の1の水準に落ちたことになります。今期の売上高は9905億円で前期比1.8%増であったことから、収益力が弱まった点は否めません。

「今年は厳しい決断をする」と強調するが…

藤原社長は、この点を十分認識しており、利益確保のためにはコスト削減が急務であり、「2025年は構造改革の対象をグローバルに拡大する。厳しい決断をする。必ず完遂することを約束する」と力説しています。

具体的には、減収が止まらない中国や日本での構造改革を含むグローバル全体でコスト圧縮に踏み込む予定で、そのための費用として2025年12月期には230億円を計上する方針です。

グローバルレベルで推進する構造改革の対象は、人員削減、不採算店舗の閉鎖、不採算ブランドの削減といった経営資源だけにとどまらず、工場の自動化や業務効率化といったオペレーション面での生産性向上も含まれており、2年後の2026年12月期には、対前期比で250億円削減できると見込んでいます。

資生堂が今回掲げたグローバルレベルで進める構造改革は、藤原社長が力説するように、完遂することは可能なのでしょうか。