元通訳・水原一平氏による26億円の“詐欺事件”は大谷翔平やドジャースにどのような影響を与えたのか。番記者のビル・プランケットさんは「一平はチームを混乱に陥れたが、ロバーツ監督は彼にただ一つ感謝していることがある」という――。

※本稿は、ビル・プランケット『SHO-TIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

大谷選手の通訳を務めることになったウィル・アイアトンさん
写真=共同通信社
韓国での開幕戦直後から急きょ大谷選手の通訳を務めることになったウィル・アイアトンさん(=ロサンゼルス)

「大谷は試練に直面している」

新しいチームメイト一同からの信頼を集めたことにより、大谷はスキャンダルのせいでシーズンに向けた準備がおろそかになることはなかった。

「あの男は、クラブハウスで本当に見事なふるまいをしているよ」

ベテラン内野手のミゲル・ロハスが証言した。

「つねに本物のプロフェッショナルとして動いていて、冷静で、身の回りのことをいつもきちんとこなしているよ。ショウヘイが実際のところ、どう感じているかをオレから話すことはできないけど。1人のチームメイトとして、あいつがどれほどの試練に直面しているのかは知っている。本当に過酷だと思う。心から同情するしかないよ。できることは、ただそばで支えてあげることだけだよ」

この任務の大部分を負ったのが、間違いなく通訳のウィル・アイアトンである。もともとドジャースの職員だった同氏だが、水原一平の後任となった。

後任の通訳、ウィルとは何者か

選手、コーチ、スタッフ全体から好かれているこの男は、ドジャースの通訳として2016年に前田健太投手の1年目と同時に入団した。

東京生まれで、アイアトンは15歳のときに家族とともにアメリカへ移住し、オクシデンタル大学とメンロー大学で野球をプレーし、2012年に後者の大学で卒業総代スピーチも行っている。

テキサス・レンジャーズとニューヨーク・ヤンキースでのインターンを経て、彼は前田の通訳としてドジャース入りし、早々に「ウィル・ザ・スリル」の異名をつけられた。打撃練習中やダグアウトでのダンスなどが、チームの雰囲気を盛り上げたと高く評価されたのだ。

前田は2019シーズン終了後にドジャースを離れてミネソタ・ツインズに移籍したが、アイアトンはそのままドジャースに残り、オクラホマシティの3Aで選手育成コーチとして活動するようになった。