紅白歌合戦で歴代最多出演(紅組)の演歌歌手・石川さゆりさんの名曲「天城越え」はなぜ日本人に愛されるのか。約3万曲のイントロを熟知するラジオDJで音楽評論家の藤田太郎さんは「天城越えのイントロのなかで流れる、ある楽器のサウンドが、日本人の心を鷲づかみにしている」という――。
※本稿は、藤田太郎『イントロの教科書』(DU BOOKS)の一部を再編集したものです。
「何度でも聴きたい」最強イントロの3条件
25年以上、イントロについて研究してきた私の視点で、こういうイントロは、何度も聴きたくなる、人に伝えたくなると思う3つの条件を紹介します。1つ目は、最初の数秒だけで『心を掴む』強いインパクト。2つ目は、映像が浮かんでくる物語性。
3つ目の条件は、サビや、Aメロ、Bメロといった、歌が入るパートには登場しないメロディが、イントロに登場し、そのメロディが独創的で、耳に残りやすいかです。いわば、本編とのつながりを考えながら、イントロを作曲するということ。
最強イントロの3条件の中で、最も編曲家の職人魂と“粋”を感じられるのはこの条件です。この条件に注目してイントロを聴くと、編曲家それぞれの特色がわかるようになります。
イントロを手掛けるのは編曲家
「あの曲とこの曲、雰囲気似てるなあ」と感じて制作者クレジットをみると、同じ編曲家が手掛けていた曲だったという、うれしい驚きと発見に出会うことが増えていくでしょう。
もう一つ、この条件で私が最強イントロかどうかを判断する基準は、鼻歌でその曲を歌うとき、サビだけではなく、無意識にイントロも歌ってしまうかどうかです。
ギターが印象的なイントロの場合はエアギター、ドラムの場合はエアドラムしたくなる曲も同様で、超絶テクニックの楽器演奏を響かせるイントロもこの条件に該当します。この条件に合致する曲を、紹介していきます。

