豊臣秀吉の弟・秀長が主人公となる2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。芸能界きっての大河フリーク&歴史YouTuber・松村邦洋さんは「秀吉と秀長の凸凹兄弟が、時にケンカしながら出世の階段を駆け上っていくストーリー展開になるのでは」と予測する――。

※本稿は、松村邦洋『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

芸能界きっての大河フリーク&歴史YouTuber・松村邦洋さん
撮影=小禄慎一郎

「豊臣兄弟!」は初の弟目線の「おとうと太閤記」

今回の大河、「豊臣兄弟!」は、豊臣秀吉・秀長兄弟のサクセスストーリーになることは間違いないでしょうね。歴史上で有名な兄弟といえば源頼朝と義経、曾我兄弟、阿部貞任・宗任、足利尊氏・直義とか、それぞれ仲が良かったりケンカしたり、中には殺し合った組み合わせもありました。

もうご存じの通り、主人公は秀吉ではなく弟の秀長のほう。言ってみれば弟目線で描く「おとうと太閤記」ですね。偉人の弟目線の大河っていうのは、これまでにはなかったと思います。兄者が英雄ですから舞台が華々しいのは保証済みですし、弟が本人ほど表立って出ていない分、ストーリーを自由につくれますよね。

だいたい後継ぎとかの責任をしょってる兄よりも、自由で無責任な弟のほうが面白味があったりしますし。この先の新しい路線にしたら面白そうです。

今回が初の大河主演となる仲野太賀さん、13歳で芸能界デビューして、その翌年にはもう大河ドラマ「風林火」(2007年)で上杉憲政の嫡子・龍若丸たつわかまる役で出てるんですね。それからは、「天地人」(2009年)「ごう~姫たちの戦国」(2011年)、「八重の桜」(2013年)、「いだてん」(2019年)ときて、今回が初主演。あ、そうそう「江」では他ならぬ秀吉の子・秀頼を演じてたんです!

第37回東京国際映画祭オープニングイベントのレッドカーペットにて。俳優の仲野太賀さん(『十一人の賊軍』)
第37回東京国際映画祭オープニングイベントのレッドカーペットにて。俳優の仲野太賀さん(『十一人の賊軍』)(写真=Dick Thomas Johnson/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

「太賀」の由来は「大河」に出られるくらいの俳優

太賀さん、主演が決まってから「徹子の部屋」(テレビ朝日、1976年~)に出てました。「愛という名のもとに」(フジ、1992年)で大ブレイクしたお父さんの中野英雄さんも出ておられるんですけど、それがちょうど太賀さんが生まれた(1993年)頃で、「大河ドラマに出るくらいになって欲しくて、名前をタイガにした」って嬉しそうに話してるVTRを見て、太賀さんビックリしてましたよ。

歴代の大河ドラマでは、これまでに9人の俳優さんが秀長を演じてますが、出番も多くて印象に残ってる秀長はやっぱり中村雅俊さんと髙嶋政伸さんのお二人です。中村さんは秀吉の正室・寧々役で佐久間良子さんが主演した「おんな太閤記」(1981年)で秀長を演じました。秀吉役は西田敏行さんです。寧々に呼びかける「おかか~」は流行語にもなりました。

一方、髙嶋さんが秀長を演じたのは、主演の竹中直人さんの「心配ご無用ッ!」で大ヒットした「秀吉」(1996年)でしたね。髙嶋さんは「太平記」(1991年)で足利尊氏の弟の直義、「HOTEL」(TBS、1990~2002年)でも毎度「姉さん、事件です」が決めゼリフの弟役、実生活でもお兄さんの政宏さんがいる、まさに“ミスター・弟”ですね。

お二人ともほんとに人柄の良い秀長を演じてました。髙嶋さんのほうがちょっと攻撃的で、しっかり仕事する感じ。「おんな太閤記」は「戦国ホームドラマ」って呼ばれてたくらい家庭的なエピソードが多くて、西田さんの秀吉があっちこっちの女に手を出すから、子を産んでいない佐久間良子さんの正室・寧々に気を遣う中村さんの秀長は、秀吉としょっちゅう衝突してました。