“渡鬼”脚本のホームドラマ「おんな太閤記」

「豊臣兄弟!」はタイトルそのまんま、ちょくちょくケンカはしながらもがっちり手を組んで上を目指す……というストーリーになるでしょう。

昔の大河では、この兄弟関係をどう描いていたんでしょうか。「おんな太閤記」は、脚本が「渡る世間は鬼ばかり」(TBS、1990~2018年)の橋田壽賀子さん。それだけに、秀吉と秀長のケンカは嫁とか愛人とか、もっぱら家族内や女がらみのことが多かったですね。

例えば、沢田雅美さんが演じた千種っていう、かなりめんどくさい女性に秀吉が手を出しまして、秀勝っていう男の子が出来ます。で、何とその千種母子を寧々のいる長浜城に呼んじゃうんですよ。「城に呼ぶとは何事じゃ」とキレた秀長に、秀吉は「側室を呼んで何が悪い」と開き直ります。

その後も京極高次の妹の龍子とか、言わずと知れた淀殿とか、もうあっちこっちすごくて、そのたびに秀長は母親のなか――赤木春恵さんでした――といっしょになって、「兄者、いい加減にしろ!」と怒ってました。

しのという盲目の足軽の子――スーちゃん、田中好子さん――を嫁にすると言って聞かない秀長に、「お前にはふさわしくない」と秀吉が大反対するエピソードも。ほんとに“戦国のホームドラマ”でしたね。

兄・藤吉郎の部下の世話や金策が仕事

小一郎――後の秀長は、織田信長軍の組頭になっていた兄・藤吉郎――後の秀吉に故郷の尾張(愛知県西部)・中村から強引に連れてこられて部下になったわけですが、最初はもっぱら藤吉郎の手下の世話とかお金の工面とかの裏方をやってたんです。

信長が美濃(岐阜県)の斎藤龍興を攻め滅ぼしたとき、大抜擢された藤吉郎が奮闘して一夜にして城を築いた「墨俣一夜城」の話は有名ですけど、藤吉郎と小一郎は川並衆っていう木曽川の辺りに勢力を張ってた土豪・蜂須賀小六に、この工事を請け負ってもらおうと直談判しに行きます。

子分を3000人も抱えた11歳年上の小六親分の前で、藤吉郎が懸命にしゃべり倒すんですけど、敵のナワバリでの土木作業という、あまりと言えばあまりにも危険なミッションですから、小六もそう簡単には首をタテには振らないんですよ。

ハッキリ見えていた! 竹中直人さんのイチモツ

と、藤吉郎の横で黙っていた小一郎が、ぽつぽつと話し始めるんです。「このたび兄者は、墨俣に城が建たなければ自分の命も無いものとの覚悟でお頼みいたしております……」って。それを黙って聞いていた小六が、「お引き受け申す」とこれまたぼそっと短く答えたんです。ぐっとくる大河ドラマの名場面ですね。

松村邦洋『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)
松村邦洋『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)

動と静の名コンビって感じですよね。もっとも、「秀吉」だと竹中・藤吉郎は川並衆に飲ませて食わせて、現場でもやいのやいのとカネであおりまくるんですけど、「彼らに支払うカネはどうするんじゃ!」と問い詰める髙嶋・小一郎に、「細けえことを言うな!」と怒鳴り散らして大ゲンカに。こういう凸凹ぶりが、このコンビの持ち味となっていくんだと思います。

この「秀吉」の第1話で、大仁田厚さん演じる小六親分が、フンドシ一丁の竹中さんの首根っこをつかんで担ぎ上げたとき、竹中さんのイチモツがハッキリ見えてたんです(笑)。翌日の月曜に職場や学校で話題になったんじゃないでしょうか。「あれ、見えてたよな?」「うんうん、絶対見えてた」とか。

Windows95が出た翌年で、まだネットも普及していない頃でしたから。今ならSNSで大炎上してますよね。今のNHKのアーカイブだとどうなっているか、確認してみてもいいんじゃないでしょうか。

(構成=西川修一)