※本稿は、松村邦洋『松村邦洋懲りずに「べらぼう」を語る』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
すぐれた商人だった江戸のプロデューサー
さあ、いよいよ1月5日(日)から始まりましたね、2025年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。
主人公が横浜流星さん演じる蔦屋重三郎。戯作(フィクション系の読みもの全般)や狂歌(大流行した短歌のパロディ)の人気作家のベストセラーを出したり、喜多川歌麿、東洲斎写楽ら浮世絵界の超大物絵師を発掘した敏腕プロデューサー。言ってみれば「江戸のメディア王」ですね。
名前がちょっと長いから、ここからは重三郎を蔦重と呼ぶことにします。
「親なし、カネなし、画才なし」と言われてたそうですから、蔦重本人に文章や絵の才能はなかった代わりに、同じようにカネはないが才能はある有望株を見つけ出して、「こいつにこんなのをやらせたら面白え」というアイデアを出して実現していくところがすごかったんだと思います。
「べらぼう」の元の意味は穀潰し、つまり働かざるけど食っちゃ寝してる人のことであり、「このドあほ!」みたいに他人を怒鳴りつける言葉でもあります。劇中では先輩から「べらぼうめ!」と叱られる生意気な流星蔦重や、逆に才能はある若い無名の「べらぼう」たちを叱咤激励する流星蔦重が見られるんじゃないでしょうか。
もっとも、蔦重には色んな顏がありまして、単にアイデア一つで「生き馬の目を抜く」と言われるエグい出版業界を渡り歩いただけじゃありません。それ以前に優れたあきんど、商人だったんです。がっちり手堅い稼ぎ口で足元を固めてから、ド派手な企画を次々とブチ上げたんですよ。