蔦重を雇った片岡愛之助さん=「鱗形屋」
この頃の鱗形屋を経営してたのは、3代目鱗形屋孫兵衛。今回演じるのは片岡愛之助さんですね。蔦重流星は出版という商売の基礎を、この大先輩を見て学んでいくわけです。
鱗形屋は当時、江戸でナンバーワンの地本問屋でした。地本っていうのは、例えば挿絵入りの小説のような草双紙とか、遊郭でのイキな遊び方やゴシップなんかが書いてある洒落本とか、江戸で出版された庶民の人たちが気楽に読める書物のことです。
1775(安永4)年に鱗形屋が出した『金々先生栄花夢』という草双紙が「黄表紙」という新ジャンルを生んだ画期的な本で、そんなこんなで地本ではブッちぎりのナンバーワン版元(出版社)になったんですよ。
蔦重はそんな鱗形屋でいろんなことを学びながら、あるスキャンダルをきっかけに孫兵衛の弟子からライバルに、そして独立して鱗形屋を大きく追い越していくことになります。そのときのカギになるのが、まずこの『吉原細見』と黄表紙なんですね。
出版物の点数で、江戸が京・大阪を追い越した!
江戸時代は「町人の文化が栄えた」って教科書では習いますけど、さっきお話しした元禄時代の『好色一代男』の井原西鶴や浄瑠璃『国性爺合戦』の近松門左衛門が活躍したのは大坂や京都でして、江戸の出版界は上方のそれより一段低く見られてました。上方の出版物を、許可をもらってから売ったりしてて、オリジナルの出版物の数はずっと少なかったんです。
そもそも地本の「地」は地酒の「地」と同じで、上方から見ればまだ一地方に過ぎなかった江戸の人が卑下した呼び名が「地本」だったんだそうですよ。
そんな西と東の関係が逆転して、オリジナルの出版物の点数で江戸が上方をブッちぎるのが、ちょうど孫兵衛や蔦重が活躍した頃なんです。そんな活気にあふれた時代の若い版元や作家、絵師たちのエネルギッシュな創作活動、それに吉原という別世界でのドンチャン騒ぎぶりを、『べらぼう』がどう描いていくんでしょうかね。ボクはすごく楽しみにしています!


