遊郭・吉原の「ガイドブック」販売でデビュー
で、蔦重は1772(安永元)年、新吉原大門口の五十間道の左側に「耕書堂」っていう書店を開きます。今の住所だと台東区千束だそうですね。そしてそこで、日本橋――今の大伝馬町あたり――の地本問屋「鱗形屋」が手がけていた吉原のガイドブック『吉原細見』を売り始めます。吉原の入り口でガイドブック。新宿・歌舞伎町の入り口で風俗情報誌を売る感じでしょうか。
『細見』には吉原の妓楼――キャバクラみたいにお客さんが遊女と遊ぶ場――と、何というか遊女名鑑って言うんでしょうかね、そこにいる遊女たちの名前が細かく書かれています。もちろん写真はついてませんが、新しいのを正月、7月と年に2回出していました。吉原に出入りする人には必須のアイテムで、ここに来る人がいなくならない限り売れ続けるんですから、おいしい商売ですよね。
その『細見』を、蔦重はただ売るだけじゃなくて中身の編集作業もやっていました。生まれも育ちも吉原っていう地縁・血縁をフル回転させて、あちこちを取材して最新の情報を手に入れたり、冊子のページのつくりのアイデアを考えたり……
ボクがまだ若かった90年代は『ナイタイマガジン』とか『シティプレス』とかその類似雑誌は、風俗店の現場に行かなくても、コンビニで売ってましたよ。今では信じられないかもしれないですけど。買ってページを開いて、「あ、きれいだな」「この人に会えるんだ」ってパッと行ってみる。便利でありがたかったですよ。

