2015年に登場したマツダ・ロードスターはいまなお世界的に人気がある。新型モデル「マツダスピリットレーシングロードスター12R」は限定200台の抽選に9500人が殺到した。マーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明さんは「ポルシェ911や現行型フェアレディZからの乗り換えもあるという。狭い公道に適したスポーツカーを求める人が潜在的に増えているのではないか」という――。
マツダスピリットレーシングロードスター12Rとマツダスピリットレーシングの前田育男代表
写真提供=筆者
マツダスピリットレーシングロードスター12Rとマツダスピリットレーシングの前田育男代表

マツダのプレミアムブランド戦略とロードスター

マツダはフォード傘下から独立したあとブランド経営に乗りだし、通常のマスブランドよりプレミアム性のあるブランドとしていく方向を目指している。

これはマツダの規模のブランドがトヨタのような巨大なマスブランドや価格競争力のある中国ブランドに対して生き残っていくための唯一の方向性ともいえる。そのためにはデザインやメカニズムなどで独自性のある車作りが必要不可欠だが、魂動デザインなどでその成果をあげつつある。

そのマツダを象徴するモデルがマツダ・ロードスターである。

現行のND型は2015年5月に発売され、ワールドカーオブザイヤー、ワールドカーデザインオブザイヤーなどを受賞し、世界的な人気車種になっている。

すでに発売から10年以上経過しているが、販売台数は一向に衰えず、2025年も日本では上半期で前年比28.9%増、アメリカでも1~7月で31.7%増と大きく伸ばしている。

このND型ロードスターに、さらに新しい物語を生むモデルがこのたび追加された。それが「マツダスピリットレーシングロードスター」である。

マツダスピリットレーシングロードスターコアモデルと齋藤茂樹主査
写真提供=筆者
マツダスピリットレーシングロードスターコアモデルと齋藤茂樹主査

マツダスピリットレーシングロードスターという挑戦

マツダスピリットレーシングロードスターは、ロードスターをベースとしながら、マツダスピリットレーシングのレース活動で培われたノウハウの注ぎ込んだ高性能スペシャルモデルである。

通常のソフトトップモデルのエンジンは1500cc、136馬力だが、マツダスピリットレーシングロードスターは2000ccエンジンを搭載し、200馬力ないし184馬力と大幅にパワーアップされている。

足回りには世界の一流メーカーのパーツを採用し、特別なものとなっている。またインテリアもフェラーリやポルシェにも使われているイタリアのアルカンターラ(人造スエード)を多用した質感の高い仕上げとなっている。つまり高性能というだけでなく、プレミアム性の高い仕上がりとなっているのだ。