首都圏の住宅事情はこれからどう変わるのか。明治大学政治経済学部教授の野澤千絵さんは「1都3県では、2030年頃に中古戸建や解体後の土地の流通増が見込まれる」という。品川区、大田区、目黒区、世田谷区の城南エリアの傾向を紹介しよう――。

※本稿は、野澤千絵『2030-2040年 日本の土地と住宅』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

復元された田園調布駅の旧駅舎=東京都大田区
写真=時事通信フォト
復元された田園調布駅の旧駅舎=東京都大田区

中古戸建住宅の流通が増えるのは2030年頃

中古戸建の流通増の予測を見ていきましょう。

図表1と図表2に、1都3県において中古戸建の流通量増加が見込まれる、駅から徒歩圏エリアの分布について、2030年と2040年のマップを示します。

これを見ると、中古戸建(あるいは解体後の土地)の流通増が見込まれる町丁目の数は、2040年よりも2030年の方が多くなっていることがわかります。

中古戸建については、2030年に流通増が見込まれることから、これ以降、2030年の推計データを使用して、駅ごとに、徒歩圏(800m)で流通見込みの中古戸建の戸数を算出し、ランキングやマップを作成しました。これをもとに、どのような街で中古戸建の流通量が増加するのか、エリア別に見ていきましょう。なお、都心3区は戸建住宅が少ないため、ここでは対象外としました。

西大井駅、中延駅、西小山駅、荏原中延駅…

城南エリア(品川区・大田区・目黒区・世田谷区)

城南エリア(品川区・大田区・目黒区・世田谷区)で主要4駅(東京駅・渋谷駅・新宿駅・池袋駅)のいずれかから30分圏内にある駅のうち、2030年頃に流通する見込みの中古戸建の戸数が多い駅を見ると、JR西大井駅以外は全て東急線沿線となっています(図表3)。具体的には、東急大井町線では中延駅・戸越公園駅・旗の台駅・荏原町駅、東急目黒線では西小山駅・奥沢駅・洗足駅、東急池上線では荏原中延駅・久が原駅です。