街の世代交代に備えることが求められる

実際に奥沢駅~田園調布駅を歩いてみると、かつて高級住宅地として名高かった地域にも、すでに空き家になっている家がかなり目につきます。数年前の状況と比べても明らかに空き家が増えているように思います。駅からすぐの立地だったり、マンション建設が可能な場所にあるお屋敷が空き家になっています。しかも長期間放置されていることが一目瞭然の状態です。

野澤千絵『2030-2040年 日本の土地と住宅』(中公新書ラクレ)
野澤千絵『2030-2040年 日本の土地と住宅』(中公新書ラクレ)

奥沢駅や田園調布駅周辺は、都心エリアには及ばないものの、東急目黒線が都営三田線や東京メトロ南北線と相互に乗り入れて都心方面につながり、また、東急新横浜線が開業して東海道新幹線の新横浜駅にもつながるなど、交通の利便性が高い地域だと言えます。ゆとりある住環境の戸建住宅に住みたいという人にとっては、注目のエリアだと思います。

100年ほど前、関東大震災という東京都心を直撃した不慮の災害があったため、郊外住宅地への評価が急速に高まりました。長期的な視点で見ると、今後、首都直下地震などの災害リスクの高まりや発生によって、もしかしたら、再び郊外住宅地の評価される時代が到来するかもしれません。それに向けて、こうした利便性が高く、かつ大量に相続の発生が見込まれるエリアについては、自治体も重点的に空き家にしないための政策を展開し、街の世代交代に備えることが求められます。

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