今年1月、世界一の半導体会社NVIDIA(エヌビディア)はトヨタとの提携を発表した。国際技術ジャーナリスト津田建二さんは「トヨタとしては単なる自動運転技術だけではなく、次世代のクルマ作りに欠かせない技術を期待した上の提携だろう」という――。
トヨタとエヌビディア、それぞれの思惑
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが、今年1月に行われたCES 2025の基調講演で、トヨタとの提携を発表した。次世代の自動運転車(AV)を共同開発するという。なぜファブレス半導体のトップ企業エヌビディアはトヨタと提携するのか。
エヌビディアはファブレス半導体メーカーであり、企画開発した半導体をティア1サプライヤーに納入するティア2サプライヤーである。
トヨタとの提携以前にも、高級EV(電気自動車)のルシッドや中国の小米、EVのテスラや自動運転のウェイモ、メルセデス、BYDなどとも共同開発している。エヌビディアとしては、最大の自動車企業のトヨタと提携にこぎつけたことを大いに喜んでいるという。
トヨタ側のメリットはどうだろうか。
エヌビディアはAI用の半導体(GPU:グラフィックスプロセッサ)を開発・設計するだけではなく、それを利用するユーザーに向けAI半導体を搭載した回路ボードやコンピューターそのものも設計し作っている。さらに顧客がAIを短期間で開発できるようにするためさまざまなソフトウエアも提供している。つまりAIのことならなんでも作り込むことのできる会社であり、自らをAI FactoryあるいはAI Foundryと呼んでいる。
テレビのコメンテーターの中には、AIは何でも生み出す魔法のテクノロジーのように発言する人がいるが、AIはひとつのことしかできない。専用のカスタムテクノロジーともいえる。だからこそ、自動運転に必要なAIといっても、さまざまなテクノロジーの組み合わせが必要で、それぞれのAIを作り込まなければならない。