2025年、自動車業界は大きく変わる

ここへきて、世界の自動車産業は、目に見えないところでも大きく変化している。表面上は米欧でEV(電気自動車)の需要が減速し、トヨタなどのハイブリッド車(HV)の販売が好調だった。米テスラの販売台数は前年の実績を下回った。その一方、中国では政府の支援にも助けられ、大きく販売台数を伸ばした。EV部門でテスラとトップを争う中国のBYDは、EV、プラグインハイブリッド車(PHV)の販売を大きく伸ばした。

そうした状況下、テスラ最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏の動きに注目が集まっている。マスク氏は米国の次期大統領のドナルド・トランプ氏との関係を築くと同時に、“自動車のソフトウェア化”へと突き進んでいるようだ。トランプ氏との関係で、主に規制緩和などを取りつける狙いがあるとの見方もある。

少し長い時間軸で見ると、今後、主要先進国ではエンジン車からEVなど自動車の電動化は加速するだろう。それと同時に、自動車同士をネットで結んでデータを使ったり、車内でSNSを自由に使えたりするような、自動車のソフトウェア化が進むことは間違いないだろう。

マスク氏は、そうした変化のビジネスチャンスを狙って、米国政府との関係強化で規制緩和や支援を取りつけているのかもしれない。わが国の自動車メーカーも欧米メーカーに遅れずに、その変化を的確につかんで対応する必要がある。

電気自動車の充電
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ファーウェイなどIT企業が自動車に参入

世界の自動車市場を眺めると、販売台数世界トップの中国では政府の支援に支えられて、EV、PHVなど“新エネルギー車”の販売が増えた。華為技術(ファーウェイ)や小米科技(シャオミ)などのIT先端企業も自動車分野に参入し、EVとネットワーク空間の接続に関する技術を結合したモデルを投入した。

中国メーカーは、アジアやアフリカや南米などの新興国地域でもEVなどの生産体制整備に取り組んでいる。かつて、“アジアのデトロイト”と呼ばれたタイでは、電動車の生産で産業育成を狙う政府の意向と中国企業の戦略がマッチし、わが国の自動車企業のシェアの低下は鮮明化している。

米国と欧州市場ではEVシフトが鈍化した。EVシフト鈍化に影響した要因はいくつかある。主なものは航続距離の短さ、バッテリー製造コストの高さ、充電インフラ未整備、補助金の削減などだ。