これまでのクルマとは根本的に違う

SDV時代となると、クルマは走るデータセンターのようになるので、搭載するコンピューターを基本から見直さなければならなくなる。

というのは、現行のクルマにはすでにコンピューターがECU(電子制御ユニット)という形で入り込んできているからだ。現在、ECUの数は高級車で80~100個、大衆車でも20~40個使われるようになった。ECUの頭脳としてマイコン(マイクロコントローラ)が使われている。

マイコンはソフトウエアで制御できるため安価であり、車体の安全性だけではなく、パワーウィンドウやワイパー、ウィンカーなど簡単な所にも使われている。それゆえ、「あれもECUでやろう、これもECUでやろう」と、今のクルマには至るところで継ぎはぎだらけのECUが搭載されている。

というわけで、SDV時代を見据えて、車内のコンピューターを根本的に見直す必要があるのだ。

現在提案されているコンピューターのコンセプトは2つある。ひとつは、近い機能を一緒にまとめる「ドメインアーキテクチャ」と、もうひとつは場所的に近くにある機能をまとめる「ゾーンアーキテクチャ」である。

どちらも多数のECUをひとつにまとめて、ECUや配線の数を減らし車体を軽くしようという流れである。

自動運転車両
写真=iStock.com/metamorworks
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iPhoneにタイヤをつけたような

ドメインアーキテクチャは、カーラジオやカーナビゲーションシステムといったインフォテインメントシステムに使うECUをいくつかまとめる方式である。

ただし機能が似ているからと言っても、必ずしもECU同士が近くにあるわけではない。接続するための配線を減らすことはできない。

ゾーンアーキテクチャは、たとえ機能が全く異なっていても近くにあるECU同士をまとめてしまおうという方式だ。欧州ではゾーンアーキテクチャが主流になりつつあり、クルマが配線の塊になってしまうことを避けている。

いずれの方式もECUをまとめて1チップにする以上、高性能なプロセッサであるSoC(複数の機能をひとつのチップにまとめた集積回路)が必要となる。

大量のコンピューターをひとつにまとめたデータセンターのように、ハイパーバイザーと呼ばれるソフトウエアで機能を切り替える仮想化技術がカーコンピューターにも入ってくることになる。こういったSoCにはマルチコア技術を取り込み、仮想化されたコンピューターやコンテナがひとつの機能を実行する。

さらに仮想化されたコンピューターをひとつにまとめる中央コンピューターも必要となり、さらにその上にゲートウェイコンピューターが加わる。

このゲートウェイは、外からの通信を受け、その情報を中央コンピューターに渡すため、しっかりしたセキュリティが必要となる。