脳の老化を防ぐための生活習慣は何か。老年精神科医の和田秀樹さんは「相手の言うことを鵜吞みにせず、『この人たちはこう言っているけれども、それは本当だろうか?』と疑う力が前頭葉の劣化を防いでくれる」という――。

※本稿は、和田秀樹『50代うつよけレッスン』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

アルツハイマー病研究を描いた3Dイラスト
写真=iStock.com/ChrisChrisW
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テレビは脳の老化を速める「老化促進マシーン」

テレビの見方には、注意が必要です。

テレビはちょっとでも悪いことをした人をまるごと人格否定して、「いい人/悪い人」の二元論的な価値観を視聴者に押し付ける傾向があります。それこそボーッとテレビを見続けていたら、そうした押し付けによって思考力が低下し、前頭葉が劣化して心身の老化が進行してしまう恐れがあります。

特に、ワイドショーを見てコメンテーターたちの言うことに「そうだそうだ!」なんて言っている人は、うつになりやすい思考パターンを持っていると言えます。

年末年始の特番を見続けるのも禁物です。テレビの前に座るのが習慣になり、実はその時間何もしていないのに、“何かをしたような”気になってしまう。正月2日3日と、箱根駅伝の往路復路をテレビで完全制覇したとしても、自分自身はこたつの中で暖まっているだけでしかない。

その意味では、テレビは脳の老化を速める「老化促進マシーン」であると言っても過言ではないのです。

そこで、もしもワイドショーを見るのなら、コメンテーターの一人になったつもりで、叩かれている側を擁護してみるとか、他のコメンテーターに“反論”してみるのが、メンタル的にも脳科学的にもお勧めの「テレビの見方」です。

「それは本当だろうか?」と常に考え脳を活性化させる

ある意見に反論するとは、どういうことか。

反論するためには相手の言うことをそのまま鵜吞みにせず、「この人たちはこう言っているけれども、それは本当だろうか?」と疑う力が必要になります。「どの部分がおかしいと思うのか」と考え、「実際はどうなのか」と調べてみる。こうした作業が前頭葉を活性化させるのです。

また、どんな罪を犯した人でも、そこに至った理由があるはずです。もちろん犯罪そのものは許されるものではありませんが、その背景には成育環境の影響もあるかもしれませんし、複雑な事情があるのかもしれません。

しかし、「こいつだけは許せない」「こんな悪人は人間ではない」という硬直した見方を続けていると、それ以上は思考停止して何も考えられなくなってしまいます。

一見わかりやすいレッテルや決めつけ、また脳にとってラクな考え方に流されるのではなく、常に意識して疑い、考えを巡らせ、問いかけてみる。それこそが自分自身の老化の進行を食い止め、うつ的な思考に陥るのを防いでくれるのです。