年明けのクリニックでは血糖値の上がった患者が増える
糖尿病専門医にとって、お正月休みは1年で最も注意すべき時期。私のクリニックの患者さんたちにも、年末近くになると「おせち料理などの食べ過ぎに注意してください」とアドバスしています。患者さんの方から「おせちを食べてもいいですか?」と相談されることもありますね。
それでも、年明けの1月から2月上旬には、通常より血糖値が上がってしまう患者さんが、かなりの割合で増えます。年末年始の無茶がデータに出てくるのがその時期で、血糖の平均値であるHbA1cは、糖分の高いものを摂取しつづける生活になり、少しタイムラグがあってから上がってくるのです。
近年、中高年だけではなく、20代や30代でも糖尿病になってしまう人も増えています。糖尿病の人にはもちろん、その予備軍、健康な人まで、お正月の食事には注意してほしいですね。
おせち料理の糖質は高いが、食べるのがNGなわけではない
おせちはもともと保存食ですから、砂糖や塩をふんだんに使って腐らないように工夫されています。ゆえに、どうしても糖分と塩分が高い。例えば、栗きんとんは、もともと栗という糖質の高い素材に砂糖を混ぜているわけですから、大さじ1杯あたりの糖分は20グラムほどと、かなり高め。黒豆の甘煮も同じように糖質が高い。また、糖尿病の患者さんには、そういった甘い料理が好きな人が多いのです。
ただ、私は既に糖尿病になってしまった人に対しても、「これを食べてはいけない」という厳しい食事制限はしません。普段の食事にしても、おせちにしても、いずれかのメニューを「まったく食べない」というのは無理な話ですよね。かえって「食べたい」という飢餓感を高めることにもなりかねません。だから、どの料理の糖質が高いかという知識を得た上で、食べる量を調節してもらえればと思います。
たしかに、おせち料理の栗きんとんや黒豆は糖質が高めですが、それをどんぶり1杯食べるわけではないでしょう。お重や皿に盛り合わせた分だけ少し、というのなら問題はないと思います。目安としては、1食につき大さじ1杯ぐらいまででしょうか。