株価が暴落した時、NISA投資家はどうしたらいいのか。米ゴンザガ大学教授で、ウォーレン・バフェット研究の第一人者であるトッド・A・フィンクル氏の『史上最強の投資家 ウォーレン・バフェット:資産1260億ドルへの軌跡』(翻訳:鈴木立哉氏/実務教育出版)より、その一部を紹介しよう――。
人間は不合理な行動をする生き物
バフェットは、投資家として成功するには2つのことを理解したほうがよいと助言する。
第一は企業を評価する方法で、これについては本書の第6章で取り上げた。第二は人間の行動を評価する方法だ。本稿では、比較的新しい「行動ファイナンス」と呼ばれる概念を用いてこれを掘り下げたいと思う。
行動ファイナンスは、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーという二人の大学教授による画期的な研究を基にした理論である。2002年、カーネマンはノーベル経済学賞を受賞し、2011年に今ではすっかり有名となった『ファスト&スロー』を出版した。
同書は、我々が気づいている以上に人の行動に影響を及ぼすヒューリスティック〔経験則や先入観によって直感的に素早く判断すること〕とバイアス〔判断の歪み〕を検討している。ここには損失回避や自信過剰、楽観主義、フレーミング効果〔同じ意味を持つ情報であっても、焦点(フレーム)の当て方によって、人はまったく別の意思決定を行うという認知バイアス〕やサンクコストの誤謬〔資金や労力、時間を投資した結果、たとえ今後のコストがメリットを上回っても、これまでの行動を続けてしまう傾向〕などが含まれる。
この言葉をはっきりとは使わなかったとしても、バフェットとマンガーは行動ファイナンスを毎日実践している。投資判断をする際には、企業を評価するだけでは十分でないことを知っている。自分の見方にはバイアスがかかっているのではないかと投資家が自己点検することは、少なくとも企業評価と同じくらい重要である。