ビタミンCとニンニクで風邪予防
風邪の予防効果が期待されている食品や栄養成分はいくつかあります。エビデンスレベルが高いシステマティックレビューのあるもののうち、現時点で予防効果が報告されているものを紹介しましょう。まずは、昔から風邪にいいとされているビタミンCとニンニクから。
ビタミンCが風邪予防にいいという説は、ノーベル化学賞を受賞した物理化学者のライナス・ポーリングが「高濃度ビタミンC」を推奨したことで世界中に広まりました。以降さまざまな研究が行われましたが、信頼性の高い報告を分析した結果では、現時点でのビタミンCの風邪予防効果は限定的で、スポーツ選手のように激しい運動を行う人が摂取する場合のみ効果が確認されています。そのほかの人への効果は確認されていませんが、適量なら害はありませんから気休め程度に摂取してもいいでしょう。
ニンニクについては、〈摂取した群〉と〈摂取していない群〉を比較すると、摂取した群のほうが風邪をひく頻度が低かったという報告があります。しかし信頼性の高い報告が少なく、被験者も少ないため、風邪を予防できるかどうかはわかりません。またニンニクは香りが強いために、同形のカプセルなどにつめて偽薬(プラセボ)と比較する「盲検化」が難しく、研究の精度が高いとはいえないのです。ここに特徴ある食べ物の健康効果を検証することの難しさがあります。食べ物と健康の研究では精度の高い調査を行うこと自体が難しいのです。
プロバイオティクスの風邪予防効果
もうひとつ、特に近年、注目を集めているのがプロバイオティクスです。体に有用な微生物を生きたまま体に取り入れることを「プロバイオティクス」といいますが、その代表的なものが乳酸菌です。「風邪予防には乳酸菌」といわれるほど、感染症予防効果を打ち出した乳酸菌のサプリメントや乳酸菌飲料が続々と発売されています。
実際、さまざまな研究で、特定のプロバイオティクスには風邪などの上気道感染症に感染する回数を減らす効果があることが報告されています。研究の数や被験者も多く、以前よりもエビデンスが蓄積されてきているといえるでしょう。少なくとも腸管の健康は、免疫機能の維持に重要な役割を果たしていると考えられます。
ところで、市販されている免疫によいとされるヨーグルトの風邪予防効果はどうなのでしょうか。そもそも食品なので盲検化が難しいうえ、企業が主体となった研究も多く、機能性表示食品の根拠とされる論文の質はあまり担保されていないというのが実際です。現状では他のプロバイオティクス食品と比べて、特にすぐれているとはいえません。