年末年始は、おせち料理やおつまみなど塩分の多い食事が多くなりがちだ。管理栄養士の成田崇信さんは「特に中高年や血圧の高い人は、塩分の摂りすぎに要注意。食事内容にメリハリをつけて、可能な範囲で減塩してほしい」という――。
元旦のテーブル
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年末年始は塩分摂取量に要注意

年末年始は、お酒を飲みながら、おせち料理やおつまみなどの塩分の多いものを食べがちです。塩分過多で、朝起きたら顔がむくんでいるという人もいるかもしれません。

おせち料理は、年末にまとめて調理して重箱に詰めておくことで、正月三が日は食事作りを休めるようにと考案されたもの。日持ちをよくするために通常より塩分や糖分を多く入れて味を濃くし、水分を減らした料理が多いのが特徴です。

また、お酒のおつまみにはイカの塩辛のような味の濃い料理が多い傾向があります。しかも、お酒自体は食塩を含んでいませんが、アルコールで酩酊すると、普段は自制している人でもつい塩辛いものをたくさん食べてしまいがちなので注意が必要なのです。

こうして塩分を摂りすぎてはいけないのは、なぜでしょうか。それはご存じの通り、高血圧や腎臓病などの生活習慣病のリスクが高くなるためです。特にすでに高血圧や腎臓病などの持病のある人はより注意が必要になります。

食塩を摂りすぎてはいけない理由

そもそも、食塩は「塩化ナトリウム」に「塩化マグネシウム」などの微量ミネラルが加わったもの。このうち健康上の問題をもたらすのが、塩化ナトリウムに含まれる「ナトリウム」です。もちろん、ナトリウムも他のミネラルと同じように、私たちの体に必要な成分であることは間違いありません。

ただし、ナトリウムを摂取しすぎると有害なので、その濃度を薄めるために体内に余分な水分を溜め込むことになります。その後、ナトリウムは腎臓を通って尿として排泄されますが、摂取量が多くて排泄が追いつかないと、腎臓に負担がかかるのはもちろん、いつまでも体液の多いむくんだ状態が続いて血圧が上がってしまうのです。

こうして血圧が上がると、腎臓により負担がかかって機能が低下し、さらにナトリウムの排泄が滞るようになり、さらに血圧が上がる……という悪循環に陥ることに。そうして血圧が高いままだと、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患、心疾患などの重大な病気になるリスクが高まります。健康のために減塩が大切だといわれるのには、こうした理由があるのです。

さらに食塩の摂取量が多い人ほど、上部消化管がんのリスクが高いというデータもあります。これは食塩の粘膜への刺激も影響していると考えられ、魚の干物など表面に塩が浮くほど塩味の濃い食品をよく食べる人ほど注意が必要です。